コロナ封じ込めで投資家の評価高まる
中国から始まった新型コロナウイルスの感染拡大だが、主要国で封じ込めに成功したのは中国だけといってよいだろう。投資家の間で中国の経済運営に対する評価は高まっている。
一方、世界最大規模の国債市場を誇るアメリカの4-6月期成長率は▲9.5%(前期比年率換算で▲32.9%)であった。1-3月期の0.3%から大幅に悪化、1947年に統計を取り始めた以降で最大の落ち込みとなった。また、OECDによる2020年のアメリカの実質GDP成長率見通しは▲3.8%であった。パンデミックが最高潮に達しようとしていた6月時点の予想と比べれば3.5ポイントほど改善しているものの、大幅なマイナスであることには変りはない。2021年の予想は4.0%であり、6月の予想より▲0.1ポイント悪化している。
新型コロナウイルスの封じ込めにてこずる一方で、財政赤字は拡大。貧富の格差、人種問題などによる市民の分裂が表面化している。
欧州では封じ込めどころか、夏のバカンス明けで感染者数が急増している。日本は欧米と比べれば感染者数は圧倒的に少ないとはいえ、封じ込めには至っていない。いずれにしても、主要国は新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済への悪影響を抑えられないでいる。
こうした経済情勢を冷静に分析すれば、多くのグローバル投資家が中国国債に興味を示すのも理解できるだろう。
米トランプ大統領は中国のハイテク企業の成長を抑え、米中デカップリング(切り離し)を進めようとしているが、金融界にとっては中国の発展を取り込んで、成長の恩恵を最大限に勝ち取るような米中経済の融合が望ましい。政治的な圧力をかけるとすれば、本当にデカップリングを進めるのではなく、交換条件として、アメリカが強みを持つ金融、ハイテク企業の本土への市場参入を厳しく迫った方がアメリカ全体の国益に繋がりそうだ。それは中国がもっとも嫌がる政策であろうが。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動中。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。