日本経済新聞(10月5日付朝刊)は「住宅ローン 完済年齢上昇 平均73歳、年金生活不安定に」の見出しで、定年退職後も住宅ローンを返済し続ける高齢者が増えていくことを報じた。「年金で住宅ローンを払う」時代には、老後の資金計画全体の練り直しが欠かせない。従来の発想では、かえって老後破綻を早める結果にもなりかねない。そこで、新たな人生プランのポイントを見ていこう。
「返済が難しい」と困っている人にとって、コロナ禍の現在は家計の危機を突破するチャンスでもある。NPO法人『住宅ローン問題支援ネット』の代表理事でファイナンシャルプランナーの高橋愛子氏は「逆転の発想」が必要だと指摘する。
「返済期間を思いきって引き延ばすことを考えてはどうでしょうか。たとえば、当初の返済計画は65歳で完済予定だったが、とても無理だと判断すれば、80歳完済への返済条件変更を申し込む。いまは超低金利の時代ですから、返済総額はそれほど増えず、毎月の返済額を大きく減らすことが可能です」
政府は金融機関に対し、コロナの影響で返済が困難になった個人や事業者から申し出があれば返済条件の変更に柔軟に応じるように指導している。
それを受けて住宅金融支援機構は返済特例として、「返済期間を最長15年延長」(完済時の年齢上限80歳)などの条件変更プランを用意した。
標準的な住宅ローン金利は1%台前半(固定金利のケース)だから、現在60歳で65歳完済予定の人が、返済期間を80歳まで延長すると、毎月の返済額はざっと3分の1近くまで下がる計算だ。返済条件変更であれば諸費用も原則かからない。
これなら年金で返済計画が立てられそうではないか。
※週刊ポスト2020年10月30日号