大統領選挙まであと1週間。マスコミ報道では1か月前には圧倒的にバイデン氏有利であったが、ここにきて接戦にもつれ込むとの見方も出てきている。投票所での開票ではトランプ氏がリードし、一方で遅れて出てくる郵便投票の上乗せがあってバイデン氏が勝つのではないかなどといった分析もある。
米マスコミは圧倒的に民主党支持が多い。ネット系メディア、日本のメディアも同様とみられる。報道内容がバイデン氏寄りであるかもしれない。だから、トランプ氏が不利とは言い切れないのだ。
トランプの外交政策は、一言でいえば反グローバリゼーションともいえる。二期目があるとすれば、それが加速しかねない。中国への懲罰追加関税措置は据え置かれ、禁輸措置が取られる中国ハイテク企業の範囲が広げられるかもしれない。
貿易構造をみると、日本、韓国、台湾、ASEANなどのアジア主要国・地域は、中国への依存度が高い。中国の加工貿易がダメージを受ければ、日本への悪影響が懸念される。中国は政策を転換させており、内需拡大、人民元高誘導によって、アジア主要国から中国への輸出が増えやすい環境を作り出すと予想しているが、それでも影響は残るだろう。
最悪の事態は、自分の支持者ばかり向いて行う政治に非支持者が耐え切れなくなり、BLM運動の激化などがきっかけとなり、国内の分裂が酷くなることだ。外交どころではなくなるかもしれず、そうなれば反グローバリゼーションの動きは弱まるかもしれないが、一方で、グローバル経済、金融市場には直接的に大きな悪影響がありそうだ。いずれにしても、日本の株式市場にとってはバイデン氏勝利の方がポジティブに働くのではないか。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動中。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。