日米の主要なマスコミが伝える通り、アメリカ大統領選挙はバイデン新大統領誕生で決着がついたとみて良いのだろう。トランプ氏にはまだ、法廷闘争の道が残されている。しかし、それを成功させるためには確かな証拠と莫大な資金が必要となる。不正の証拠があるかどうかは分からないうえ、資金については有権者から募金を集めるという点も現状では難しいようだ。
グローバル投資家にとっては、バイデン大統領が望ましいと言える。なぜなら、この4年間で混乱を極めた国際秩序が修復されると考えられるからだ。
そもそも、トランプ大統領の看板政策は「アメリカ第一主義」である。最初から、国際協調どころではなかった。貿易政策では、貿易不均衡の是正からスタートしたがその後、世界経済のブロック化を招きかねない米中デカップリング(切り離し)が目標にすり替わった。これは、単純に対中強硬策というだけでなく、経済の“自由化・グローバリゼーション”の流れを遮断する政策である。
4年前にトランプ氏を大統領に押し上げたのは、中・低所得層の白人労働者であり、比較的年齢の高い保守的思想を持つ地方の有権者たちであった。経済的に恵まれない人々が多い。経済の“自由化・グローバリゼーション”により、恩恵を受けられなかった人々であり、激しい国際競争や、その結果生じる産業の空洞化を通じて、賃金が低下したり、失業の憂き目にあった人々である。
彼らの利益を代表しようとすれば、その政策は“自由化・グローバリゼーション”の否定に行き着いてしまう。しかし、それは世界経済の成長を非効率化し、富める国とそうでない国の関係を固定化、さらに、政治的な不安定を作り出すリスクの高い危険な政策であった。トランプ大統領の降板は、こうした危険な政策の中止を意味するものである。
前週1週間のハンセン指数の騰落率は6.7%であり、NYダウ指数の6.9%には及ばなかったが、日経225指数の5.9%を上回った。大きく上昇したハンセン指数だが、細かくみると、トランプ氏有利と伝えられた4日には下落しており、バイデン氏有利と伝えられた5日には急上昇している。