また、「工業企業の収益が回復しつつある。キャッシュフローが増えているのだが、使い道、有望な投資先・案件が見つからない。そのことが、要求払い預金の増加につながっている」などといった見方も紹介している。
こうした状況では、資金を市中に広くばらまく形での金融緩和は、効果が薄いということだ。
さらに、当局は、金利操作や公開市場操作、預金準備率操作といった伝統的な金融政策について、限界を感じているようだ。
中国人民銀行は2014年9月にMLF(Medium-term Lending Facility、中期貸出ファシリティー)を創設している。これは、特定の金融機関に対して、国債などの担保を取ったうえで、3か月、6か月といった中期の資金を貸し出す方法である。特定の金融機関は当局の意向を受けて、零細企業、三農(農村、農業、農民)など経済的弱者に対して集中的に資金を供給する。
不特定多数ではなく、特定の金融機関に対して資金を供給する方法であるSLF (Standing Lending Facility、常設貸出ファシリティー)、PSL (Pledged Supplementary Lending、担保補充貸出)などといった新たな金融調節手段も使い始めている。
こうした中国金融市場の状況や中国人民銀行の政策スタンスは、日本にとっても参考になるはずだ。
まず、中国のように、実質経済成長率(2016年4-6月期)が6.7%もあって、金利は1年物貸出基準金利が4.3%もある国ですら、流動性の罠に陥っている可能性があるという点に注目する必要がある。