中国は流動性の罠に陥っている。
中国人民銀行調査統計司の盛松成・司長は7月16日、2016年中国資産管理年会に出席した際、「(マネーサプライの)M1とM2の伸び率の差が大きく拡大している。中国企業はすでに流動性の罠に陥っている」などと発言、投資家の関心を集めている。
M1とは“現金預金+預金通貨”から成り立っているが、こちらは6月末時点で前年同月比24.6%増となった。一方、“現金預金+国内銀行などに預けられた全預金”から構成されるM2は、11.8%増にとどまっている。
M1はこの1年で伸びが大きく加速している。一方、M2は今年1月には14.0%増まで高まったが、その後は鈍化が続いている。
この点について盛司長は、「資金は企業に流入しているのだが、企業は資金を抱えて投資をためらっている。企業は適切な投資プロジェクトを見つけられないでいる。だから、大量の資金が預金通貨(要求払い預金-保有小切手・手形)に滞留してしまっているのだ」などと分析している。
18日の中国本土・毎日経済新聞の記事によれば、証券系アナリストの分析として、「資金が供給されても、それは実体経済に向かわず、たとえば不動産などに向かっており、資産価格上昇を引き起こしている。売買成立によって、企業、個人預金は不動産会社の要求払い預金に振り替わるが、不動産会社は次の投資に資金を向けられず、資金はそのまま要求払い預金に滞留している」などといった意見を紹介している。