今後の為替相場の大きなトレンドはどうなっていくのか。IMF(国際通貨基金)が発表する購買力平価(ドル換算)で測った2019年のGDPをみると、1位は中国で23兆3930億ドルだ。2位はアメリカで中国の92%、3位はインドで41%、4位は日本で23%、5位はドイツで20%に過ぎない。
一方、実勢レートでは中国は14兆7318億ドルで世界2位となる。1位はアメリカで定義上、購買力平価と同じ21兆4332億ドルなので、中国よりも45%大きいことになる。
購買力平価とは、財・サービスなどの最終需要を揃えて各国の通貨で測り、その比較から算出されるレートであり、実際の生活から得られる実感に近いレートということもできよう。そうした実感をベースに為替レートを評価すると、ドルは高すぎるのである。
実勢レートと購買力平価では何が違うのだろうか。実勢レートは需給で決まる。貿易収支のほか、金利差であるとか、資本取引による資金の流れとか、金融取引による影響も強く受ける。基軸通貨であるドルは流動性が高く、ドル建ての金融資産は豊富で、安全性、安定性が高いとみられている。単純にいえば、だれもがドルを持ちたがる。だから各国通貨対ドル実勢レートは購買力平価で測るよりもドル高となる。
しかし、この先もドル高であり続けるだろうか。2019年における政府総債務残高対GDP比をみると、世界ワースト1位は日本で237.96%である(資料:GLOBAL NOTE 出典:IMF推計)。以下、ベネズエラ、スーダン、エトニア、ギリシャ、レバノンと続き、イタリアはワースト7位で134.8%、アメリカは少し飛んでポルトガル、アンゴラに次ぐワースト13位で108.68%である。
政府純債務残高対GDPで比べると、多少順位が変わるが、日本はレバノンに次ぐワースト2位で154.87%、以下、イタリア、バルバドス、カーボヴェルデ、ポルトガル、フランス、ベルギーと続き、アメリカは9位である。
アメリカの財政赤字は先進国では日本、イタリアほどではないにしても、十分深刻な状態だ。債務残高が大きい中で、基礎的財政収支もマイナスである。国債消化の難易度は高く、FRB(連邦準備制度理事会)が自ら買わざるをえない状態だ。発行体である国家の利払い負担を考えると、金利上昇を容認しにくい。また、ドルの供給が増え続けるのだから今後、ドル安圧力がかかることにもなる。