また、供給面での要因もある。イギリス、ドイツ、フランス、イタリアなど欧州では、多くの都市が再び封鎖される事態となった。生産の停止、サプライチェーンの分断といった現象が起きている。
中国側の要因もある。中国は4、5月の時点で新型コロナの封じ込めに成功しており、生産力は既にほぼ完全に回復している。また、米中関係の緊迫化や、それが長期化するといった見通しから、中国は輸出を奨励する政策を打ち出しており、それが効果を現している。
そのほか、インド、ASEANなどに流れていた海外からの注文が中国に移るような現象も見られたようだ。
いまだに選挙の負けを認めないトランプ大統領だが、任期の最後まで精力的に“仕事”を続けている。事実上の輸出禁止企業を増やすなどの対中強硬策を打ち出し続けている。米中デカップリング(切り離し)を進めようとしているのだが、現在、米中間で起きている現象と比べるとちぐはぐだ。
米中カップリングを進めたのはアメリカ企業であり、消費者である。そして、米中デカップリングで困るのはアメリカ企業であり、消費者である。
バイデン政権が発足しても、米中の緊迫した状態は変わらないといった見方が多い。しかし、これ以上経済面での対立を続けることは、アメリカの国益を損なうことは明らかだ。今後、経済、金融のメインストリートを歩んできた人々が政権の中枢に入る以上、トランプ政権のやり方を否定した上で、違った対中政策を打ち出すことになるのではないか。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動中。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。