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元ソニー社長・出井伸之氏「日本企業はものづくり神話から脱却を」

これからの日本企業が生き残る道をどう考えるか(EPA=時事)

これからの日本企業が生き残る道をどう考えるか(EPA=時事)

 もはやスマホは生活必需品。インターネットなしの生活など考えられない。25年前からこうしたネット社会の未来を予見していたのが、ソニーで「名経営者」と呼ばれた出井伸之氏である。83歳にして現役経営者としてベンチャー企業を育成・支援している彼の目に、2021年の日本経済の行方はどう映っているのか。出井氏に話を聞いた。

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〈今、インターネット企業、コンテンツで稼ぐ企業へと変貌したソニーは、2020年9月年間連結決算では売上高4兆824億円、営業利益5461億円を計上。過去最高益を記録。不採算部門の切り出し、選択と集中を経て、半導体事業に加えて、ゲーム・エンターテインメントのコンテンツ事業がソニーを牽引している〉

 IT化が進むことを止めることはできません。さらにAI化も進む。当然、必要な労働力は少なくなる。けれど一方で、ソニーは今、関連企業が1000社以上あるんですよ。みんな自由勝手に、新しいものを作り出せている。そのなかでソニー傘下のアニプレックスから『鬼滅の刃』も生まれました。映画だけでなく、デジタル配信などさまざまなメディアが絡み合ってあれだけのヒット作になった。あれはハリウッドも気になっているはずです。

 IT化が人から仕事を奪うって日本では思われているけども、それは違う。例えば、私は中国の世界屈指のディスプレーメーカー「BOE」(京東方科技集団)のコンサルをここ3年ほどやっています。ここでも、国家主席、習近平の「ハード部門ではなくソフトから利益をあげろ」という大号令を前に、巨大メーカー「BOE」ですら、のたうちまわっている。中国でさえ、ものづくり企業の変化は無茶苦茶に難しいんですよ。

 だけど、中国はある“合言葉”で、IT化というソフトと、ものづくりの現場を融合させ新たなビジネスモデルを作ろうとしている。それが「OMO(Online Merges with Offline)」“オンラインがオフラインを融合する”なんて訳されたりもしていますが、携帯さえあれば生きていける中国ではリアルな店舗、リアルな生産現場でもオンラインとの融合に新たなビジネスチャンスがあると、そこに殺到している。

 僕はものづくり神話からは脱却すべきだと思うけど、日本が部品などの洗練された技術を持っているのは確かです。これほど洗練された製造業を持っている国は他にない。しかし、それを活かそうという発想が日本では生まれてこない。そのキーワードは“分断”ですよ。

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