あるいは、私が1982年に考案して特許を取得した「フロート式デビット決済法」も、フィンテックの一つである。総合口座の定期預金に使った金額分だけ“鍵”をかけ、普通預金から無事に引き落とされたら“鍵”を解除するというものだが、このコンセプトを応用して貯金だけでなく、住宅、車、生命保険、年金、退職金なども将来の支払い保証の担保として紐付ける仕組みを作れば、人々は手元で使えるキャッシュが一気に増える。
それらを総合して個人の信用創造をする“フィンテック商社”ができたら、日本人のライフスタイルはガラリと変わると思う。
本来、その最短距離にいるのは銀行などの金融機関である。ところが、古いシステムに縛られている彼らは、ネット時代、デジタル時代になっても大半の業務で紙に印鑑を捺すペーパー中心のアナログ時代のやり方を続けているし、やろうと思えば顧客データベースから信用度を正確に把握できるはずなのに未だに担保を重視し、手数料で稼ぐビジネスに執着している。
このまま銀行が自己改革できなければ、それこそフィンテック企業に淘汰される筆頭候補となるだろう。
※週刊ポスト2016年8月12日号