【あのIFAに会いたい 宗正彰の「資産運用業界」探訪/第6回】
ゲスト/ひびきフィナンシャルアドバイザー株式会社
代表取締役社長 前田 将英氏
ホスト/三井住友DSアセットマネジメント株式会社
オンラインマーケティング部長 宗正 彰氏
IFAとは、特定の金融機関に属さず、中立的な立場で資産運用のアドバイスを行うプロフェッショナルのこと。名称は「Independent Financial Advisor」(独立系フィナンシャルアドバイザー)の略で、すでに欧米では、資産運用において非常に身近な存在だ。
日本でも昨今、知名度が高まりつつあり、IFAを介した資産運用が広まっている。そこでIFAへの理解を深めるべく、業界のリーダーをゲストに迎え、三井住友DSアセットマネジメント オンラインマーケティング部長・宗正彰氏をホストとして対談を行った。
証券会社のリテール営業部門がIFA法人に業態転換した日本初の事例
2007年SBI証券入社。リテール営業を1年経験後、本社にて営業企画部、経営企画部などを歴任。経営企画部時代には、兼務する形でコーポレート部門や各商品部門を担当。SBI証券のIFA事業部の立ち上げにも携わり、2013年、ひびきフィナンシャルアドバイザーへ入社。入社後は自身もIFA業務を行い、2016年7月、代表取締役社長就任。現在もマネジメント業務だけではなくプレイヤーとしても活動中。
宗正:第6回目のゲストは、ひびきフィナンシャルアドバイザー株式会社の前田代表取締役社長です。ひびきフィナンシャルアドバイザーは、創業から100年を超えるひびき証券と楽天証券の共同出資によって、2012年2月に設立されました。まずは、設立に至る経緯をお聞かせください。
前田:弊社の母体となったのは、ひびき証券のリテール営業部門です。弊社設立以前の2011年は、証券業界にとって非常に厳しい環境でした。ひびき証券としては、業務の拡大および効率化のため、事業ポートフォリオの再構築を含めた各種対応策を検討していました。一方、楽天証券においては、IFA事業のさらなる拡大の施策として、証券会社から金融商品仲介業者への業態転換を支援していく方針を掲げておりました。その結果、2012年2月に共同出資という形でひびきフィナンシャルアドバイザーが設立されました。証券会社のリテール営業部門を金融商品仲介業者、つまりIFA法人に業態転換した日本で初めての会社です。
宗正:私も資産運用業界に長く身を置いていますが、御社の設立は、当時金融業界で非常に注目されたことを覚えています。前田社長は設立時から携わっていたのでしょうか。
前田:いえ、私が弊社に加わったのは設立してから約1年後です。実は、私は新卒でSBI証券に入社しています。私は学生時代から、いつか「社長」になるという目標を持っていました。就職活動中においても、将来社長になるためには、どういう行動を取ればいいのかと自問している中で、まずは社長と直接会える職につき、経営者から話を聞いて、考えを学ぼうと思い、証券会社への就職を希望しました。当時SBI証券は、インターネットチャネルだけでなく、対面チャネルも自社で有しており、インターネットの発展を考えると、今後の金融業界で存在感の大きな会社になるだろうと予想し、就職を志望しました。
SBI証券に入社後、1年間はリテール営業を行い、2年目からは本社の「営業企画部」、その後退職まで「経営企画部」にて従事、その際以前から希望していた「コーポレート部」にも兼務で配属となり、上場企業の社長から様々な話を聞かせて頂いたことが、私にとって大変勉強となりました。さらに、社内のIFA事業部の立ち上げにも参画し、その時の上司の一人が、後の弊社設立時の副社長になっています。その上司は、SBI証券を退社後、弊社含む様々な証券会社でIFA事業の立ち上げに関わり、その後独立しています。
宗正:前田社長が入社された2007年当時にSBI証券を志望されるというのは、非常に先見の明があったと思います。入社後すぐは、元々の希望とは違う部署に配属されるわけですが、その後様々な経験を積まれる中で、結果として「運命の仕事」との出会いになったわけですね。お話を伺う限り、その上司だった方に誘われて御社に入社したのですか。
前田:誘われたというよりも、以前からIFAの魅力について語ってもらっていたので、双方の方向性が一致したという感じです。IFA事業部の立ち上げに関わり始めてからですが、IFAが将来的に日本の個人投資家にとって重要な存在になるのは間違いないと確信するようになりました。さらに、欧米のプライベートバンクのように、富裕層を対象とした金融資産の運用や管理を、自分で手がけたいという思いが強くなっていたのです。
宗正:そこで自らIFAになることを決意され、御社に入社されたのですね。対面型証券会社のリテール営業をバックグラウンドに持つIFAが多い中、思い切ったご決断です。さらに、欧米ではプライベートバンキングは歴史があり、富裕層中心に定着していますが、日本ではあまり普及していない状況を考えると、今後重要性はさらに高まるはずです。ここでも前田社長の先見の明が光っていますね。
税理士向けの勉強会をきっかけに顧客開拓につなげる
中央三井信託銀行(現在の三井住友信託銀行)にて、「運用企画/ファンドマネージャー/株式アナリスト」を歴任。上場企業の経営戦略担当取締役を経て2008年に当社入社。大手運用会社初の投信直販事業やブランドマーケティング戦略など、特にオンラインを駆使した「業界初」のビジネスモデルを次々と構築。現職ではIFA法人をはじめオンライン証券やネット銀行など、次世代の投信チャネルを統括。テレビやラジオなどのメディア出演および各種イベント登壇の際には『宗さま』の愛称で親しまれるなど、資産運用業界では異彩を放つ存在。最近は「withコロナ/afterコロナ」時代の新たなデジタル戦略を積極展開中。
三井住友DSアセットマネジメント「ユアみらいネット」
前田:有難うございます。とはいえ、弊社に入社しIFAとして活動を始めた当初は、なかなか結果が出ませんでした。前職で個人営業の経験が短かったので、いわゆる「自分の顧客」はおらず、まったくゼロからのスタートだったからです。会社自体、設立間も無く、一般的な知名度もありませんので、新規開拓にはとても苦労しました。それでも、当初抱いた「欧米のようなプライベートバンキングサービスを提供したい」という思いは、変わりませんでした。
宗正:どんなときも「IFAとして日本でプライベートバンキングサービスを提供する」という強い信念を持って、日々取り組まれていたのですね。では、その苦しい状況を打破するに至った、秘訣を教えてください。
前田:はい。プライベートバンキングサービスを必要とされるお客様に、どうしたら効率よくアプローチできるか考え、出した結論の一つが「税理士」へのアプローチです。本当の意味でプライベートバンキング業務を行うには、運用資産だけではなく、全ての資産を把握した上で、適切な金額を運用に回すことが必要です。その為には、プライベートバンキングサービスが必要な富裕層を顧客に持つ、税理士の方との連携は必須だと感じました。アプローチ方法としては、税理士法人に所属している税理士の方々に対して勉強会を開催し、資産税を活用した事業・資産承継の方法等をお伝えするというものです。資産税というのは、毎年細かい変更があって、税理士の方でも常に把握しているわけではなく、一定のニーズがあるんです。具体的には、税対策可能な商品紹介を行った上で、最後に自分が資産運用アドバイスの仕事もしていることを伝えます。このような活動を入社後1年近く継続しました。
しばらくすると、一人の税理士の方から運用の相談に乗って欲しいというお客様を紹介され、その紹介以降、今に至るまで比較的順調に案件が増えていきました。税金の話から入ることで、税理士の方々にも熱心に聞いて頂き、信頼関係が構築できたと考えます。
宗正:税理士を必要とする方というのは、相応の資産をお持ちの方でしょうから、一見遠回りのようでも、効率の良いアプローチ方法であったと思います。そういった地道な活動の結果、確実に税理士の方々の信頼を得られたのですね。
それらの実績が認められたことで、最終的に代表取締役社長に就任されています。
顕在化していない顧客のニーズを掘り起こす
宗正:社長に就任されて以降も、前田社長は引き続きIFAとして活動されています。ご自身はIFAとしてお客様と接する上でどのようなことを心がけていらっしゃいますか。
前田:私はお客様が本当に必要なサービスを提供するために、お客様のニーズを明らかにすることを心掛けています。なぜなら弊社では、特定の金融商品を推奨したり、資産運用の方針を会社として決めたりせず、お客様のニーズに合う金融アドバイスを提供することに徹しているからです。ただし、お客様自身でもご自身のニーズを把握されていないケースがかなりあるため、ニーズを明らかにする知識と技術が、IFAには求められると考えます。
宗正:顧客の真のニーズに合ったサービスを提供する。とても基本的な事のようですが、それを実行するためには、深い関係構築と豊富な金融知識が欠かせません。そして、顧客一人一人に個別化された御社のサービスを鑑みると、一人のIFAの方が担当する顧客の数は自ずと限られてくると思います。
前田:ケースバイケースですが、一人のIFA当たり20~30名のお客様が適正なのではないかと思います。私は、「1~2か月の間に最低1回は全てのお客様と面談する時間をとるように」と弊社のIFAに言っているのですが、これが実現出来るのはそのくらいの数になると考えます。
宗正:御社は2020年9月に、名古屋支店を開設されました。東京本社・大阪本社を含め、全国の拠点は合計6か所になりましたが、今後も御社は規模を拡大されていくのでしょうか。
前田:名古屋支店の開設は、そこに弊社のIFAとなる人材がいたからというのが最大の理由です。これからも、弊社が目指すサービスを提供できる人材がいれば、その方が拠点とする地域で社員として加わってもらいたいと考えています。今、IFAの認知度が上がりつつあり、弊社への転職を希望してくれる方も増えてきました。
各証券会社の強みを自社の強みに生かす
宗正:御社は、楽天証券、SBI証券だけでなく、その他様々な証券会社と業務委託契約を締結しています。それには、どのような理由があるのでしょうか。
前田:取扱商品数で言えば、SBI証券・楽天証券が他社を圧倒しています。しかし、証券会社には取扱商品だけではなくそれぞれ強みがあります。お客様がご所望される商品・サービスに見合った証券会社をご案内できるよう、複数社と契約しています。
宗正:提供するサービスによって、最適な証券会社をご紹介するというスタンスは、少数精鋭の会社だからこそ出来ることであり、顧客本位の提案をされている事が良く分かります。御社にしかないサービスという点では、最近新規事業をスタートさせているそうですね。
前田:まだ取組みを始めたばかりですが、関連会社を通じ、非上場企業に出資する私募ファンドの取扱いを開始しています。具体的には、お客様にファンドを通じて非上場企業への投資機会を提供するというスキームです。適格機関投資家として、ひびき証券協力の元業務を行っているので、まさにグループの強みを生かしたサービスと言えるでしょう。このファンドへの投資は、お客様にとって資産運用の新たな選択肢になりますし、出資を受け入れるベンチャー企業にとっても、ベンチャーキャピタルではない新たな資金調達先として検討できるというメリットがあります。
宗正:まさに欧米のプライベートバンクが提供しているサービスに近いですね。一般的に個人がベンチャー企業に投資をするのはなかなか難しいですが、御社の私募ファンドを通じてそれが可能になる上、一般的な金融商品には無い魅力を享受できる可能性があります。富裕層の顧客を中心に、新たな選択肢が増えますね。
前田:一般的なIFAが手がける金融商品は、株式・投資信託・債券といった運用商品がメインですが、弊社では運用商品はあくまで選択肢の1つとして捉えています。お客様の主なニーズが、保険や相続、事業承継といった分野であれば、そちらを優先するスタンスです。もちろん、相続や事業承継はIFAだけでは難しく、専門のノウハウが必要になるので、専門家と連携し、ワンストップでソリューションをご提案しています。
宗正:一般的なIFA法人の提供するサービスよりも、一歩も二歩も踏み込んだ多様なサービスを提供されているのが、良く分かりました。前田社長の持ち前の粘り強さと、揺るぎない信念を持って、今後も先進的で多彩なサービスを提供されていくことを期待しています。
宗正:前田社長、本日は有難うございました。
前田:こちらこそ、有難うございました。
対談を終えて
高校サッカー強豪校で『ボランチ』と『サイドバック』で大活躍した前田社長。今では社長としての『舵取り』を担いつつ、『素早い動き』で業界をリードする。相通じる今と昔の2つのポジションを巧みにこなす彼とのいつもの話題、それは潜在ニーズを明らかにする「知識」と「技術」の重要性。なるほど、IFA業界のゴールに向かって放たれるロングシュートの勢いが強くなる訳だ。
(三井住友DSアセットマネジメント オンラインマーケティング部長 宗正彰)
ひびきフィナンシャルアドバイザー株式会社
金融商品取引業者 近畿財務局長(金商)第373号
金融商品仲介業者 近畿財務局長(金仲)第263号
古物商 東京都公安委員会 第301041406310号
所属金融商品取引業者
(楽天証券株式会社)
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第195号
加入協会:日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、日本商品先物取引協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会
(ひびき証券株式会社)
金融商品取引業者 近畿財務局長(金商)第32号
加入協会:日本証券業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会
(日産証券株式会社)
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第131号
加入協会:日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、日本商品先物取引協会
(株式会社SBI証券)
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第44号
加入協会:日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会
(あかつき証券株式会社)
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第67号
加入協会:日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、一般社団法人日本投資顧問業協会
(東海東京証券株式会社)
金融商品取引業者 東海財務局長(金商)第140号
加入協会:日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会
※ひびき証券については、一部の外国籍証券に限定して媒介を行っております
※日産証券については、東京本社、大阪本社および福岡支店に取扱担当者を配置しております
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第399号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会