しかし、最もひとり暮らしのよさを噛みしめるのは、意外な瞬間だった。
「体調が悪いときこそ、ひとりがいいって思うわけ。だって、自分の好きなだけ、体調が悪いままでいられるんだもの。もし同居人がいたら、いちいち『大丈夫?』って心配されて、『大丈夫よ』って答えなきゃいけない。煩わしいったらないわよ。もちろん、体だけが資本だから、鼻うがいしたり、葛根湯をのんだり、枕元に薬を置いて寝たり、万一のときの準備は欠かしません」
60才以上の暮らしにおいて、体調が優れないときに同居よりひとりの方が満足度が高くなることは、前述の辻川さんの調査でも明らかになっている。一見、同居人がいた方が安心できそうなものだが、家族がいると余計な気遣いが必要になる上、何もできない自分に不甲斐なさを感じて気持ちが落ち込みやすいため満足度が下がるのだ。
骨の髄まで、女のひとり暮らしの楽しさを熟知していると胸を張るオバ記者だが、一方で、いまだに「迷い」は尽きないと話す。
「私は、結婚してるときって、なんか寂しかったんだよね。でもいまは、ひとりで出かけたって寂しいと思わない。誰かに話したいことは、すぐFacebookに投稿したり、友達にLINEできるからひとりに感じないの。SNSって大したもんだよ。
でもね、だからといって、これから先もずっと同じ暮らしをするかはわからない。本音を言えば、できれば違う暮らしがしたいっていう気持ちもある。だって私、こんなに長いことひとりでいる予定じゃなかったし、独身貴族を貫くつもりなんてまったくないんだもの(笑い)。コロナで家にいる時間が増えたせいか、自分は本当にひとりなんだなあって思うことが増えた。自由と切なさはつねに両方あります」
上京したばかりの学生のようなセンチメンタルも、ひとり暮らしの醍醐味かもしれない。
※女性セブン2021年3月4日号