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「課題はやっている」と言うが… 予備校教師が明かす「受験に失敗する親子」の典型例

親の過干渉も問題だが、無関心も大問題

親の過干渉も問題だが、無関心も大問題(イラスト/ユキミ)

エピソード2「合否は塾次第って勘違いしていない?」

「ほかの塾に通っていたんですが、成績が上がらないので、こちらに入れてください」

 と相談に訪れたのは、高3の息子と母親。この時点で6月。受験の天王山ともいえる夏を前にした転塾はリスクが高いので、私も心配になり、成績が上がらない原因を探ろうとしたのですが……。

 生徒本人に志望校や将来の希望を聞いても、面接の参考書に書いてあった文言をそのまま言っているかのようにあいまい。母親も、

「本人と塾にお任せしているんで、私にわかるわけがありません」

 と、逆にお叱りを受ける始末。どうやら、大学進学はさせたいが、進路指導の先生に、このままでは合格の見込みはないと言われたので、「とにかく塾を変えよう」ということになった様子。

 当たり前と思うかもしれませんが、受験成功の大前提は、良好な親子関係にあります。「良好」とは、親は子供に干渉しすぎず、子供は親の協力に感謝して勉強を進めるといったバランスの取れた関係。こういう親子は、目標と動機が共有できているため、受験に挑む体制が家庭内でできています。ところが、今回のようなケースでは、親子で目標が定まっていないうえ動機も共有されていないので、受験を乗り切る舞台が整っていないんです。

 とりあえず、入塾テストで実力を調べてみると、高1までの内容を理解していないことが判明。成績が上がらなかったのは、復習の途中だったからで、前の塾の教え方が悪かったわけではありませんでした。そこで、現状を正確に伝えておこうと母親に電話。

 ところが、

「それは塾の仕事で私には関係ないでしょう。高いお金を払っているんだから、そちらでどうにかしてください」

 と、電話を切ってしまうではないか。過干渉も問題ですが、親の無関心も大問題。勉強の遅れを取り戻しつつ、受験を乗り越える学力をつけるには、本人の覚悟と努力、親の理解が必要なのにそのどれも足りないこの生徒は結局、浪人することになりましたが、また塾を変わってしまったので、いま頃どうしているのやら……。

取材・文/上村久留美 

※女性セブン2021年3月25日号

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