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妻が先立つケースに備えて「夫のために手料理は作らない」の真意

夫のことを思うからこそ「夫の世話はしない」という考え方も(イメージ)

夫のことを思うからこそ「夫の世話はしない」という考え方も(イメージ)

 世界一の長寿国である日本。特に女性は、男性より長生きする傾向にあるため、夫の死後にひとりで暮らす妻について語られることがこれまで多かった。しかし、ここ数年の平均寿命の上昇率を見ると、男性の寿命の方が急速に延びており、女性との差は年々縮まっている。

「夫のためを思えばこそ、世話をしない方がいいこともある」

 そう話すのは、つじかわ耳鼻咽喉科院長で、『老後はひとり暮らしが幸せ』の著者である辻川覚志さんだ。

「妻の方が先立ち、夫が残されるケースも今後は増えるでしょう。毎日、妻が料理を作って『妻の手料理がおいしい』と覚えてしまった夫は、万が一、急に妻がいなくなったとき食べるものに困ります。

 いまのうちから『夫の世話はしない』と決めて、自分が作ったおいしい手料理は自分だけで食べる。夫には、スーパーの総菜を食べさせて味に慣れてもらうか、自炊を覚えてもらう。前人未到の長寿の時代には、全員がひとりで生きていくスキルを身につけておく必要があるのです」

 そんなの、夫がかわいそう──と若いうちは思うかもしれないが、80才になって残された夫が料理もできず、「スーパーの総菜は家の味と違って口に合わないから食べたくない」となる方が問題だ。

孫への金銭的な支援は控える

 子供や孫への支援も、かわいいからといって、自らを犠牲にすることはない。介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんが言う。

「孫へのお祝い金や教育費の援助は、一度出すと引っ込みがつかなくなるばかりか、孫が増えるたび、同額を出さないといけなくなります。特に、習い事の授業料のように長く続くものは危険です。孫のお世話も、体力的に難しいと思ったら、正直に伝えた方がいい。できることだけ手伝って、面倒を見る回数を減らした方が、結果的に子供家族と良好な関係を保てます」

 世界一働き者の日本人女性は、妻役、お母さん役、おばあちゃん役を、何才になっても完璧にこなそうとしてしまう。しかし、60才を過ぎたら卒業してもいいのではないか。

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