格差を拡大させるキューバ系アメリカ人からの援助
ハバナで出会った国営の旅行会社に勤める現地のガイドの話によると、彼の1か月の基本給は15米ドル程度だという。彼は資格で後10米ドル分まで増えるものの、それでも十分な生活はできない。今回キューバでガイドをしてくれた38歳のトニーは、国営の旅行業社で働くが、彼の月間の給与は25米ドル程度だそうだ。
1か月に必要な米、鶏肉、豚肉等の配給を受けることができるそうだが、どう考えてもそれだけで暮らしていけるとは思えない。彼の生活の糧となる収入のほとんどは観光客からもらうチップだという。
多くの国でガイドたちはチップで収入の大半を得ていると聞くが、このように給与水準の低い国では、チップの持つ意味合いはとても大きい。彼の場合、両親から受け継いだアパートがあり、そのアパートの価値は10万米ドル程度だと話してくれた。彼は、そのアパートの一部屋を旅行者へ貸し出して収入を得ている。
ハバナの旧市街の外国人向けのレストランでは、5人メンバーのバンドがサルサを演じ、2人の男女のダンサーが情熱的に踊ってくれる。演奏の終わりには自分たちのバンドのオリジナルCDを売りにテーブルに営業に来る。1枚5米ドルである。この1枚のCDを作る費用は1米ドルもしないだろう。利益率は少なくとも8割、1枚4米ドルの儲けだ。加えてダンサーも客からのチップを求めテーブルに挨拶にやってくる。原則社会主義の国で立派に資本主義が機能している。
このように観光客と接点のあるキューバ人と接点のない普通のキューバ人の間では、生活のレベルに大きな格差が出てくる。その格差をより大きくするのが、キューバ系アメリカ人からの援助で、米国にはキューバから亡命・移民した人が約200万人いると言われる。