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米国との国交正常化で経済激変か? キューバの今を歩いた

1950年代のキューバン・テレフォン・カンパニー社の株券。株式市場復活の日は近い?

1950年代のキューバン・テレフォン・カンパニー社の株券。株式市場復活の日は近い?

 2009年からオバマ政権によるキューバへの送金できる金額に対する規制が緩和されてからその送金がキューバ経済に与える影響力が高まってきた。ハバナコンサルティンググループはその額は40億米ドル程度ではないかと推定している。これは世界銀行の予想による2013年のキューバのGDPの771.5億米ドルの5%程度に相当する。キューバで稼げる額の何十倍も所得がある在米キューバ人は、本国の家族や親戚へ送金を行っている。

骨董屋から出て来た1958年の株券

 基本的なインフラについてもキューバは問題を抱えている。私達は今回キューバでの旅で4か所のホテルに宿泊したが、そのうち1か所ではWi-Fiが、2か所ではエレベーターが故障していた。

 ホテルの受付嬢に聞くと、1つのホテルではエレベーターは明日修理されると聞いたが、3日経ってもエレベーターは修理されず、Wi-Fiも滞在中に使えることはなかった。後日ガイドにその話をすると、キューバでは慢性的にエンジニアが不足している為だという。

 ハバナ市内の骨董屋に入った時の事である。そこには革命前のコカ・コーラ(現在キューバでは敵国のコカ・コーラは売られていない)の鉄板のサインが250米ドルで、また、当時キューバで営業していたと思われるウェルズ・ファーゴ銀行のサインも70米ドルで売られていた。アメリカの資本主義がその昔、この国に存在していた歴史の証である。

 私はふと、株券は売ってないかと聞いてみた。これは長年金融業界で働いてきたプロとしての勘である。今でこそ電子化されてしまっているが、昔は株主であることを証明する株券という紙切れが世界中に存在した。するとその店のオーナーは、「少し待て」と言って奥に入っていった。

 数分も経たないうちに彼が持ってきたのは、何とキューバン・テレフォン・カンパニー社の1958年の株券である。その後の調査で同社が米国上場の大手通信会社ITT社が大株主であった事実は確認できた。この歴史の証人を見ていると、この国がその昔資本主義の国であった事がよくわかった。

 米国との国交回復によって、この小さい国に経済大国米国の資金が流れ込む事になろう。それにより、キューバの遅れたインフラは米国資本によって再構築されていく。その過程でキューバに株式市場が生まれるのも意外と遠い将来ではないのではないかと思っている。キューバは今後大きな変化が見込まれる国として、世界で興味深い国の一つである。

文■岡元兵八郎:1963年宮崎県生まれ。上智大学外国語学部比較文化卒業後、1986年ソロモン・ブラザーズ・アジア証券入社(機関投資家担当米国株式セールス部門に配属)。1990~1995年はソロモン・ブラザーズNY本社勤務。1997年からは外国株式セールスの責任者となる。2001年より日興ソロモン・スミスバーニー証券、外国エクィティ部マネージング・ディレクター。2004年から2013年までシティグループ証券外国エクィティ部マネージング・ディレクター。2013年末からSMBC日興証券。新興国や途上国投資の啓蒙活動を行い、ブラジル、UAE、パキスタン、モンゴル、イラク、南アフリカなどの運用会社、証券会社、証券取引所の経営者達との親交も厚い外国株のエキスパート。著書に『外国株一筋26年のプロがコッソリ教える 日本人が知らない海外投資の儲け方』(ダイヤモンド社)がある。

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