相続では遺産受け取りに条件を設けるケースもあるという。もしその条件をクリアできなかった場合、遺産はもらえなくなってしまうのだろうか。親からの遺産には配偶者や子供などの相続人には「遺留分」という法的に最低限保障される分配の割合があるというが、遺言を無視しても遺留分は有効なのか。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。
【相談】
父が遺言状を作成。母と、私を含めた2人の兄弟の前で発表。困惑するのは父が趣味で飼育中の熱帯魚のこと。遺言では面倒を見るのは私になっており、飼育を放棄した時点で遺産の分配金は没収と記されていました。私は熱帯魚に関心がありませんし、でも本当に、飼育を放棄したら、お金は没収されますか。
【回答】
分配金をもらうのは、遺言者の配偶者や子供、法定相続人ですから、この遺言は遺産分割の方法の指定です。遺産が現預金なら、そのお金を、不動産や株などは換金して分配され、各自の分配金が、各自が持っている遺留分(法定相続分の2分の1)を侵害しなければ、分配は難しくはありません。
熱帯魚の世話をしないと分配金没収の条件は、一種の負担です。遺言で何かすることを義務付ける遺贈を負担付遺贈といい、その遺贈を受けても負担を履行しない場合、遺言執行者や相続人は家庭裁判所に遺言の取り消しを求めることができ、取り消されると遺贈は無効、遺産は相続人に返されます。
しかし、ご質問では分割方法の指定ですから、他の相続人の申立てで遺言執行者が選任され、遺言自体に基づき、分配金の返還が求められる可能性があります。
遺言状で没収金の分け方が決まっていない場合、【1】他の相続人に遺言状と同じ割合で分配するか、【2】分配の指定のない財産として、改めて遺産分割されるかのいずれかになると思います。