キャリア

63歳女性が振り返る「昭和50年の就職体験」 住み込みの靴屋での甘くない現実

 そのくせ2か月もたたないうちに、「ヒロコがいねぇどつまんなくて、パチンコばっかりやってんだよ。仕事先、見つけたから帰ってこ(帰ってこい)」と職場に電話してきたりして、ワケわかんない。

 そのときは、「バカ言ってんじゃね」と突っぱねたけど、後ろ髪を引っぱられると、それを振り切って前に進めるんだよね。ひどいホームシックにならなかったのは、「帰ってこ」のおかげだったのかもね。

 靴屋の住み込み店員は1年で切り上げ、天引き預金のおかげでアパートを借りて、専門学校の入学金を払えたけど、それからはバイト、バイト、バイト。ハマトラのブラウスはますます遠のいて、とうとう一足しかない靴まで壊れたときは、アパートの玄関に座りこんで泣いた。──なんて、私の昔話はともかく、コロナ禍のこの春、主要企業の高卒内定者数は、昨年と比べて3割減ったとか。採用されなかった高卒の子の無念、運よく採用されて上京した子の不安。

 お金さえ払えば、学校と名のつくところに入れる時代に生まれながら、10代で社会に出る子らのことが気になって仕方がない。

【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。

※女性セブン2021年5月20・27日号

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