「固定型」が本当に有利なのか?
そのような事態を受けて、銀行の窓口も一変している。昨年までは住宅ローンを組む際、変動型を選ぶ顧客が7割を占めていたというが、今やそれも逆転。新規では固定型が過半を占め、借り換えに至っては7割強が固定型を選ぶようになっているといわれる。「少しでも低い金利を求めて変動型を選ぶ」という住宅ローン選びの常識も変わりつつあるようだ。
ただし、「今の金利が低いから」というだけで固定型を選択するのには注意も必要だ。ファイナンシャルプランナーの藤川太氏(家計の見直し相談センター)が語る。
「現在、銀行が前面に打ち出している10年固定というのは、ベースが変動型で当初10年間は固定にする期間優遇タイプにすぎません。たとえば三井住友信託の場合、10年固定で当初10年は『0.3%』ですが、優遇期間をすぎると、基準となる店頭表示金利から『マイナス1.4%』の引き下げ幅となります。これに対し、変動型は『0.6%』と一見、金利が倍も高いイメージに映りますが、返済期間中はずっと『マイナス1.875%』の引き下げ幅が続く。つまり、10年経過後は同じ変動金利であるにもかかわらず、10年固定はその差の0.475%分高い金利を払い続けなければならなくなってしまうのです」
そのままローン返済を続けていた場合、当初10年間で0.3%分有利になったとしても、その後は0.475%分不利になるというのだ。
「残りの返済期間が15~20年以内なら固定に切り替えてもいいと思いますが、20年超の返済期間が残っている方は慎重に考えるべきです」(藤川氏)
マイナス金利で「借り換えの絶好のチャンス」と安易に飛びつくのは避けたいところだ。