金融庁の金融審議会が2019年に「老後30年間で約2000万円が不足する」といった試算を出し“老後2000万円問題”が話題になった。本当のところ、老後破産しないためには月にいくら必要なのか。ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんが語る。
「夫婦2人で持ち家に住む場合、食費や日用品費、公共料金、お小遣いなどを含めて毎月必要な基本生活費の目安は17万~18万円程度。ひとり暮らしの場合は11万~12万円程度となります。家が賃貸の場合は、これらに家賃を加えた金額を考えておきましょう」
今回、月10万円台の生活費(住居費を除く)で心豊かに暮らす50代のひとり暮らし女性に密着。彼女の生き方・考え方を参考に、“充実したシニアライフ”を設計してみてはいかがだろう。
主婦経験と健康管理。これが何よりの節約に
酒井マサコさん(59才)の生活費は、住居費を除くと10万円未満だが、これは専業主婦時代から習慣づけてきた節約のたまものだという。
「そもそも離婚前から、家賃と子供の学校教育費を除いて、家族4人で10万円の生活費しか渡されていませんでした。家計は苦しかったのですが、夫に頭を下げて追加でもらうのはもっとつらい。月10万円で回せるように1円単位で家計簿をつけ、水道光熱費もグラフ化。おかげで節約が板につきました」
結婚していた当時に比べると、いまは同じ「生活費10万円」でもひとり暮らし。「むしろ、ラクになった」という。
「子供たちも独立し、いまは時間もお金もすべて自分のもの。天国ですね。日々の楽しみは、早朝散歩。毎日夜明け前に家を出て、日の出を見てから帰宅。朝焼けの空と川を見ながら歩くのは、まさに至福の時間です」
平日は始発電車に乗って出勤し、就業後はなじみの酒店などで買い物を楽しむ。これも幸せな時間なのだという。
「私、お酒が大好きなので、これだけは贅沢をしてもいいことにしています」
酒は毎月7000円分飲むが、健康診断の結果では、肝機能は年々好調。
「ストレスがないからでしょうね。それに健康管理も意識しています。食事は旬の野菜を中心にたんぱく質もしっかり摂取。運動は50才から水泳に通い、自宅では玄関に突っ張り棒をかけて“ぶら下がり体操”をしたり、室内で使えるトランポリンやバランスボールを駆使してストレッチは欠かしません。体内年齢は39才なんですよ」
健康だと医療費もかからず、長く働ける。健康こそ、何よりの節約だという。
「19年間専業主婦だったので、年金は多くありません。65才まではいまの会社で働き、その後は週3回くらいパートで働けたら、年金と合わせて、やっていく自信はあります」