そうしたトラブルを避けるには、生前の遺言書作成が必要となる。
「遺言書には、『介護をした××には遺産の6割を、2人の妹にはそれぞれ2割ずつを相続させる』というように具体的に記しておく。これには妹たちも従わざるを得ません。付言事項として、『介護の大変さに報いるため長女の相続財産を多くすることを理解してください』と記せばなおよいでしょう」(同前)
遺言書がない場合は、介護日誌や金銭出納帳を作り、費やした時間や労力、出費などを細かく記録しておかなくてはならない。山本氏が続ける。
「裁判所で“寄与分”が認められたケースでは、〈介護職員を雇った費用×介護を行なった日数×裁判所が判断する割合(裁量割合)〉という計算式で寄与分の金額が算出されます。細かく記録しておけば、その分だけ多くお金に換算できますが、かなり低く見積もられてしまうのが現実です」
民法改正で2019年7月以降は法定相続人以外にも「特別の寄与」が認められるようになり、義父母の介護をした〝長男の嫁〟などが財産分与を請求できるようになったが、認められるためのハードルはやはり高い。この場合も、遺産を渡すには「介護をした長男の嫁に〇〇円を与える」などと遺言書に明記するのが最善策だという。
そうした手を打たないと、自分のことをいちばん支えてくれた家族が泣くことになる。
※週刊ポスト2021年6月18・25日号