日常生活に変化をもたらすこととなった新型コロナウイルスの感染拡大。在宅で仕事をすることとなり、家族の時間が増えたという人も多い。
製薬会社勤務の多田省吾さん(仮名・47才)は小学6年生と2年生の娘を持つ。かねてから、もっと子供とかかわる生活がしたいと考えていた多田さんは、在宅ワークを「チャンス」ととらえた。
「もうほんの数年で、娘たちは自立して、親と密接にかかわらなくなってしまう。本気で子育てに力を注げるのはいましかないと思いました」
現在はオンラインに切り替わったが、1日に最低5本は会議が入り、妻も残業が多い。多忙な共働きの多田家では、コロナ禍以前はシッターサービスを利用することもあった。それで家の中が回るならいいと割り切る一方で、長年、ある思いを秘めていた。
「母が私にやってくれたことを子供たちにもしてあげたかったんです。手料理のありがたみや、いつも母が家にいてくれる安心感を子供にも体験してもらいたかった。それを女性がやるべきだという思いはなく、いまはぼくが家にいるわけですから、ぼくがやればいい。
料理はほぼ未経験でしたが、毎日、長女の塾用のお弁当も作っています」(多田さん)
仕事の連絡が入っても、子供との食事中はスマホを触らないのが多田さんの信念。同僚にもあらかじめそう伝えて、子育てが最優先の生活を楽しんでいる。
ダウンコートも自分で洗濯
家事経験ゼロから、妻のスキルを超えるほど家事のエキスパートになった夫もいる。
1年以上、リモートワークを続ける外資系金融機関勤務の市原直人さん(仮名・50才)は、医療事務のパートをする妻に代わって、結婚生活20年で初めて家事に携わった。
「わが家は2世帯住宅で、70代後半の妻の両親が同居しています。感染対策として、妻が職場から帰宅したら、妻には玄関で部屋着に着替えてもらい、すぐにお風呂に入ってもらう。その間、私が妻の洋服を洗濯することにしました。最初は何も考えず丸ごと洗濯機に放り込んでいたのですが、服の状態が悪くなるのが早いと妻からクレームがあったんです」(市原さん・以下同)