繰り下げ受給のもうひとつの落とし穴が「手取り減」である。
「75歳繰り下げを選択する場合、65歳以降も働いて収入を得ていると考えられます。その場合は長期間、給料から税金や社会保険料が天引きされる。年金受給が始まると税金や社会保険料も増え、実際の手取りは84%も増額されないことにも注意が必要です」(北村氏)
もちろん、75歳繰り下げが有効になるケースもある。
「家計に余裕があり、夫婦ともに健康に自信がある場合に限りますが、平均寿命が長い『妻だけ繰り下げ』という選択は有効だと思います。メインとなる夫の厚生年金をもらいつつ、妻の年金を増額できるので晩年まで安定した生活を送れます」(北村氏)
北村氏が危惧するのは、年金のさらなる改悪だ。
「過去に企業の定年と年金受給開始年齢はセットで引き上げられてきたので、今年4月の『70歳就業法』のスタートは、年金支給開始年齢を段階的に70歳へと引き上げる布石と考えられます。今後ますます年金がもらいにくくなることを前提として、老後設計を考えてください」(北村氏)
※週刊ポスト2021年7月2日号