コロナ禍では“受診控え”による健康悪化が問題となった。ワクチン接種が済んだ後に、あらためて検診を受けようと考えている人もいるだろうが、どの検査を、どんなタイミングで受けるといいのか。
がんの予防や検診を推進する日本対がん協会によると、2020年の肺・大腸・胃・乳房・子宮頸部のがん検診の受診者数は前年比30%減と大幅に落ち込んだ。検診忌避により発見が遅れ、進行がんに発展するケースが懸念されている。
神奈川県保険医協会が県内の医療機関に実施したアンケート調査(2020年8月発表)によると、内科で42%、耳鼻咽喉科で55%が「受診控えによる重症化例があった」と回答した。体重減少や咳が続いていたのにコロナへの感染を恐れて受診せず、後に進行がんや末期がんと診断されたという深刻なケースも報告された。ナビタスクリニック川崎の谷本哲也医師が言う。
「検診の有無による死亡率への影響は小さいとする海外の研究結果もあり、何も症状がなければ、検診が1~2年空いたことを過剰に心配する必要はありません。この1年半の間にコロナで延期していた検査があれば、ワクチン接種後に受けるとよいでしょう」
谷本医師が例として挙げるのは肺や胃、大腸のがん検診だ。
「その他のがんは症状が出て進行してから発見されるケースが多い一方、日本人の死因として多いこれらのがんは早期発見により治療することができます。喫煙者なら肺のCT検査を、過去にピロリ菌がいると指摘された人なら胃の内視鏡検査を受けるとよいでしょう。
また、大腸がんの家系やポリープがあった人、潰瘍性大腸炎の人などは大腸内視鏡検査の間隔を空けすぎないようにし、コロナ禍で検査のタイミングを逸した場合は受けるべきです。大腸がんは定期的な便潜血検査で死亡率が下がるとのデータもあります」(同前)
痛みなどの自覚症状が出にくい生活習慣病にも注意が必要だ。谷本医師は、血液検査を受けるように勧める。
「生活習慣病の先にある動脈硬化など血管系の病気はギリギリまで症状が出ず、突然死に繋がります。体調に問題がない人でも中高年なら最低、年に1回程度、健康状態を確かめる意味で受けるとよい。尿酸やコレステロール、糖尿病の薬などを飲んでいる人は血液検査の数値によって薬の調整を行なうことも必要です。
また、日常生活の質を左右する眼科や歯科の検診も、この間に受診を控えていたなら行くといい。口腔内の環境悪化が健康全体に影響を及ぼすとの研究もあるし、緑内障は症状が出ない間に進行することもあります」(同前)