阿部寛演じる破天荒な弁護士・桜木建二が、落ちこぼれ高校生たちを東京大学に合格させるべく、熱血指導を繰り広げるドラマ『ドラゴン桜』(TBS系)が、好評のうちに最終回を終えた。現実問題として多くの東大生たちが、その青春を猛勉強に費やして入学しているといわれるが、赤門をくぐった後も、“受験戦争”は終わらない。
東大では、文科、理科とも一~三類に分かれて受験する。一般的に「文科一類は法学部」「理科一類は工学部」などと認識されているが、そう単純ではない。1、2年生の間は全員が、目黒区・駒場にある教養学部に所属し、言語や人文科学、生命科学など、文系理系の枠にとらわれず、学問の基礎を幅広く習得する。
「それぞれの専門分野に進む前に幅広く教養を広げられる機会があることは、学びの幅を広げながら、自分が本当に深めたい専門分野を見出す期間として、効果的な仕組みです。教養学部制により、学問の多様性が担保されているといえます」(東大工学部卒で教育イノベーターの本山勝寛さん)
「法学部」「工学部」といった専門学部に実際に進めるのは、3年生からだ。文科一類から理科三類まで、それぞれ基本となる進学先の学部はあるが、各学部は定員が決まっており、十分な成績がないと自分の行きたい学部に進むことができない。また、必要な成績さえ収めていれば、文科一類から医学部に進むことも、理科三類から文学部に進むこともできる。東大では、意欲さえあればなんでもできるのだ。
それゆえに、学生たちが主体的に学びを深めるための取り組みも多い。たとえば、各クラスにある「シケ対(試験対策委員)」。クラスによってまちまちだが、学生たちがそれぞれ担当する授業を決め、授業内容の書き起こしや“試験対策プリント”を作成し、シェアすることで、試験勉強の負担を軽減する。受験同様、“みんな一緒に突破しよう”と協力し合う文化があるのだ。『東大メンタル「ドラゴン桜」に学ぶ やりたくないことでも結果を出す技術』(日経BP)の著者で、東京大学経済学部4年生の西岡壱誠さんが語る。
「シケ対は、ずっと昔から続いている、半公式的な“伝統”です。ゼミでは『輪読』をよくやります。課題の本が分厚いと、ひとりで読破するのは容易ではありません。そこで、章ごとに担当を分け、それぞれが要約を作り、交換し合うのです」