江戸幕府直轄の教学機関「昌平坂学問所」の流れをくみ、明治10(1877)年、日本初の近代的な大学として設立された東京大学。以来、日本一の大学として君臨してきた。もちろんいまでも、「東大出身」は一大ブランドだ。社会に出て活躍する人材も少なくない。
かつて東大といえば、官僚を多く輩出する“エリート養成所”のイメージがあった。しかし現在、東大出身の官僚は激減している。2020年度の国家公務員採用総合職試験では、幹部候補となる、いわゆる「キャリア採用」1717人のうち、東大出身者は249人と、1998年以来最少となった。
では、いまの東大生たちは、卒業後の進路にどこを選んでいるのだろうか。大学院に進学する者、一般企業に就職する者、海外に活躍の場を求める者など、その進路は様々だが、最近、東大の新たな特性となりつつある選択肢が「起業」だ。
経済産業省の調査では、2021年現在、東大発のベンチャー企業数は323。2位の京都大学と100近い差だ。
2016年、東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)という官民ファンドが設立された。東大の100%子会社だ。同社の協創推進部部長の筧一彦さんが解説する。
「東大からは素晴らしい研究が多数生まれています。それを国内外に事業として展開していくのが、東大IPCの目的です。生み出された成果は、社会で実用化されてさらに価値が増します。そこで、研究の社会実装支援や投資を行うことで、産学連携を後押ししているのです。
また、東大では2005年から『アントレプレナー道場』というベンチャー入門編の教育プログラムを手掛けています。こうした環境に触発され、現在入学生の1割程度が“ベンチャー企業をつくってみたい”と口にしています」