不要物は2トントラック5台分の量に
服部さんには、母が過ごした世田谷の自宅の整理という重労働も残されていた。数十年ぶりに訪れた母の“終の住処”は、片づけ上手だった十勝さんの自宅とは思えないほど物があふれ返っていた。
「押し入れまで本や映画のパンフレットが詰め込まれていて、不動産の権利書など重要な書類が見つからず途方に暮れました。幸い、テレビ番組の企画で業者に家を整理してもらえることになり、その最中に権利書が見つかったのですが、不要物は2トントラックで5台分もの量でした」
断捨離の大変さを経験した服部さんは、夫の両親にも断捨離を進めてもらうよう伝え、夫とは自身の銀行口座について情報を共有していると話す。
終活で、まずやるべきは「資産のありか」を明確にすることだ。夢相続代表取締役の曽根恵子さんが指摘する。
「親の銀行口座や生命保険を把握しておらず、子供が困るケースは非常に多いです。親の死後にこれらを確認することは想像以上に難しく、結局、見つからずに損をすることも少なくありません。最近はネットで口座を管理するので通帳がない金融機関も増えて、さらに煩雑になりました。
トラブルを避けるには、親が元気なうちに不要な口座を閉じておくこと。年金暮らしになったら、年金を受け取る用の口座と予備の口座で、2~3つ程度に減らしておきましょう」
散らかった家も財産トラブルのもととなる。不要な物の整理も早めに進めておきたい。相続・終活コンサルタントの明石久美さんが指摘する。
「自宅が物であふれていると、実印や年金手帳、貸金庫の鍵など大切なものが見つからず、遺族が途方に暮れてしまう。また、愛用品を多く残しておくと、処分する際に遺族の精神的負担が大きい。だからといって、親が気を使って捨てすぎてしまうと、思い出の品が残らなくて家族が悲しむこともあります。
ベストな方法は、親が元気なうちに『これを整理しようと思うけど、欲しいものはある?』と、家族全員がそろっているときに“生前形見分け”を進めることです」(明石さん)
独りよがりの終活は避けることが、失敗の回避となる。
※女性セブン2021年7月15日号