最後は子供が親の面倒を見るもの――そんな“常識”は、とうに時代遅れのものになっている。独立した子供たちには、それぞれの家庭と生活があり、年老いた親が頼りにしようとしたところで、ろくな結果にはならない。むしろ、子供に相談したことが、取り返しのつかない悲劇を招くこともある。尊重されるはずの「故人の遺志」も、子供の勝手な判断でないがしろにされてしまうことがある。
「夫は長期の入院の末、病院で亡くなりました。『死んだ後、一度は自宅に帰りたい』と言っていたので、私も自宅安置が当たり前だと思っていました。
ところが、葬儀社との窓口だった長男が『家だと狭いし、ドライアイス交換も大変だから』と、勝手に葬儀社の安置所に運ぶ手配をしてしまったんです。私が『せめて、自宅の前を霊柩車で通ってあげて』と懇願して遠回りしてもらいましたが、夫はどれだけ寂しい思いをしたことか……」(愛知県在住の70代女性)
希望していた葬儀の形を、子供が勝手に変えてしまうケースもある。悲しそうに話すのは栃木県に住む80代女性だ。
「3年前に亡くなった夫は家族葬を望んでいました。子供たちも同意してくれると思っていたら、長男が『盛大にしたい』と言い出した。夫とは面識のない自分の会社関係者や友人にも声をかけ、参列者は200人近くに。『親戚に“寂しい葬式でお父さんが可哀相だ”と言われたくない』とか、自分本位の話ばかりしていた。それなのに葬儀費用は『親父の遺産から出して』と、当然のように言うから呆れました」
本人が死んだ後の話だからいいだろうと片付けてはいけない。子供がよくても、妻や友人・知人が悲しむケースがあるからだ。
「子供たちだけで話し合い、私には『家族だけで見送ることにしたから』と事後報告。夫が残していた、親しい友人などの参列者リストは完全に無視されてしまった」(東京都在住の80代女性)
「次男が葬儀代に納得せず、値切ること値切ること。遺影は『写真を加工するだけでなぜこんなにかかるんだ』とか、『骨壺の原価はいくらか教えてほしい』とか、業者に詰め寄っていました。祭壇のお花も減らし、空いたスペースはレースで補うことに。さすがに胸が痛みました」(長野県在住の80代女性)