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【日本株週間見通し】日経平均は戻りを試すか、上値の重い可能性も

 つい最近までは、“インフレ加速・長期金利上昇”というリスクが恐れられていた。しかし、足元では、米国で期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率が2.2%台にまで低下するなど、5月10日に記録した2.54%をピークに低下傾向が継続している。また、米10年物国債利回りも3月に付けた1.78%をピークに低下傾向が続いており、先週後半には1.2%台と5カ月ぶりの水準にまで切り下げる場面も見られた。

 長期金利の低下の背景としては、米連邦公開市場委員会(FOMC)後にショートカバー(売りポジションの解消)が進んだことなど、需給面での要因が大きいとの声が聞かれる一方、債券市場では年後半の景気減速を織り込みにいっているとの指摘も聞かれている。実際、米国やドイツなどでは経済指標のモメンタムが鈍化してきており、景気回復ペースが減速してきているのは事実のようだ。

 金利低下は株式投資の妙味を高め、相場のサポート要因となるはずだが、将来の景気後退を映した金利低下となると、話は異なる。グローバルに活動する製造業など景気敏感株の占める比率が高い日本株にとってはネガティブな話であり、海外勢が日本株を敬遠することで今後の上値の重さにも繋がりそうだ。また、3度目の緊急事態宣言解除から1月も経たないうちの4度目の緊急事態宣言の発令、緊急事態宣言下での東京五輪開催を巡る是非の声などを背景に、国内での与党の求心力低下を懸念視する向きも増えている。政治不透明感の高まりも海外勢が日本株を避ける一因となるため、こちらも日本株の上値を重たくしそうだ。

 ただ、米サプライマネジメント協会が発表する製造業・非製造業のISM景況指数などはモメンタムが鈍化していても、好不況の目安となる50を大幅に上回る60を4カ月以上連続で記録している。水準としては依然強いことに変わりはなく、景気鈍化を織り込むのは早すぎる印象も受ける。また、安いところでは買い集めておきたいと考える投資家もいるはずで、日米ともに相場がここから一層大きく崩れることも想定しにくい。日経平均については既に相当に水準を切り下げていることもあり、200日移動平均線が位置する27500円が下値めどとして意識される。

一方、今月下旬からは主力製造業の4-6月期決算が徐々に始まってくる。投資を検討していても、まずは決算を確認してからと考えている向きが多そうで、決算が一巡するまでは、外部環境の不透明感の継続もあり、反発力は鈍いと考えておいた方がよさそうだ。

 そのほか、今週は海外での経済指標にも注目だ。まず米国では6月の消費者物価指数(CPI)、生産者物価指数(PPI)など物価関連の指標が発表される。上述したように、足元では期待インフレ率および長期金利が低下してきているわけだが、米国でのインフレ懸念がなくなったわけではない。発表後にトレンドが転換するのか反応を見極める必要がある。また、中国では4-6月期GDP(国内総生産)や6月の鉱工業生産、小売売上高など景気指標が予定されている。なお、米国でも景気指標の発表が多い。足元では、景気回復ペースの鈍化が懸念され始めているだけに、世界経済をけん引する米中二大国の景気指標には注目が集まる。指標の鈍化が鮮明になると、一段のリスクオフムードともなりかねないため、留意が必要だ。

 一方、国内では、小売業を中心に3-5月期決算が終盤を迎える。週初から多数の決算が予定されており、週を通して決算を受けた個別株物色が中心となりそうだ。

 なお、今週は12日に6月工作機械受注、米3・10年国債入札、13日に中国6月貿易収支、米6月消費者物価指数、米6月財政収支、米30年国債入札、14日に米6月生産者物価指数、地区連銀経済報告(ベージュブック)、15日に日銀政策決定会合(16日まで)、中国4-6月期GDP、中国6月鉱工業生産、中国6月小売売上高、中国6月固定資産投資、米7月ニューヨーク連銀製造業景気指数、米7月フィラデルフィア連銀景気指数、米6月鉱工業生産、16日に黒田日銀総裁会見、米6月小売売上高、などが予定されている。

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