昨年の高値1307ドルをつけたのは、スイス国立銀行(中央銀行)が対ユーロ上限を撤廃した「スイス・ショック」による上昇だった。ところが、今年はマクロ型の上昇が続く中で、6月下旬にイベント型の上昇が加わった。それが、英国の欧州連合離脱の決定だった。
国民投票の結果が出た6月下旬以降、金融市場の混乱は金価格を押し上げた。
リスク回避で金市場にも資金流入が加速し、7月5日には、世界最大の金ETF「SPDR(スパイダー)ゴールド・シェア」が残高を1日だけで28.81トン増やした。翌6日には、COMEX金先物市場で2年4か月ぶりの高値となる1377.50ドルをつけた。その後、調整に入り、8月現在は1300ドル台ばで推移している。
6月下旬以降、イギリスやドイツなどを含めて欧州でも金がよく売れている。
現在の高値圏をつくっている主役は、欧米のヘッジファンドだが、フランスでのテロ事件やブレグジットを受けて膨らむ不安心理などから新たに金を買う動きや、保有中の金を手放さない傾向が総じて強まっている。
こうしたリスク回避の買いが、インドや中国の金需要の落ち込みをカバーするような需給構造になっている。
※マネーポスト2016年秋号