だが、3年のゼミで専攻したのは、ロボット工学だった。
「入りたかった予防医学ゼミの教授が退官してしまって。そんなとき、キャンパスで会った学生が、『ロボット工学が人気だよ』と、教えてくれたんです。最初は、『ロボット関係は何の知識もないから無理ではないか?』と思いましたが、やってみることにしました」
博士課程の面接では専門的な質問に全部答える
芸能界では、100%以上の力で頑張れるかどうかを基準に、自分で仕事を決めていた。
「でも、ロボット工学は50%以下。これまでの私ならやめておくところですが、大学での私はひよっ子ですから、『ここは素直に人の話を聞いてみよう』と思ったんです(笑い)」
そこで「ロコモティブシンドローム」(※)が高齢化社会の日本にとって非常に重要なテーマであることを知り、大学院に進んで研究を続ける道に。そして、高齢者のスクワット支援ロボット『ロコピョン』を企業と共同で開発した。
【※ロコモティブシンドロームは、運動器の障害による運動能力が低下した状態で、要介護や寝たきりになるリスクがある】
「さらに博士課程へ進みたかったのですが、教授が博士課程の講座を持っていなかったので、2年間欠かさず受講した予防医学の教授に相談して専攻科目を変更しました。一般的に、博士課程で専攻科目を変更することはあり得ませんが、教授は私が前に進めるようサポートしてくださったのです。
博士課程の面接では、『ロボット工学をやってきたあなたに、基礎老化学は難しいのでは?』と、専門的な質問をされましたが、2年間必死で勉強したので全部答えることができ、『そんなに勉強しているなら』と、入れていただけたのです」