しかし、その他にも、二大経済大国である米中をはじめとした先進各国での経済指標のモメンタムにピークアウト感が出てきていること、景気減速が懸念され始めている中での新型コロナウイルスのデルタ変異株の世界的拡大なども債券買いの背景にあると言われている。短期金利との差が縮小しイールドカーブが平坦化してきており、景気後退を示唆するような動きも見られているため、世界景気に対する先行き不透明感が強まってきていることは間違いないようだ。
こうした中、27~28日には米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれる。金融政策については、これまでの大規模緩和が維持される見通しのほか、物価などに対する見方も従来通り「過度なインフレは一過性」との見方が維持される可能性が高い。相場への影響は限定的となりそうだが、前回のFOMC後に長期金利の低下基調が強まっただけに、今会合後の長期金利の動きにも注目したい。
そのほか、主要メディアによると、菅政権率いる内閣支持率は30%台にまで急落し、発足以来最低を記録したという。政権求心力の低下、政局不透明感の強さは海外勢の日本株を敬遠する理由となる。また、東京五輪がいよいよ始まるが、五輪関係者の新型コロナ感染などが相次いで報道されている。大会が終わる頃までの感染動向の不透明感なども日本株の上昇を抑制しそうだ。このように、海外要因だけでなく日本独自の株高抑制要因も多くあるだけに、今後の日本株の上値は引き続き重いとみておいた方がよいだろう。そのため、先日の安川電機<6506>の決算のように、好決算でも買いが続かないといった動きが、この先の4-6月期決算シーズンにおいても見られるかもしれない点には留意したい。
一方、日経平均は200日移動平均線が位置する27700円付近まで既に調整している。20日にはオーバーシュート気味に同線を大幅に下回る27330.15円まで下げていることもあり、調整一巡感もみられる。今年2月16日につけたバブル崩壊後の最高値30714.52円をピークに軟調が続いてきたが、半年近く続いただけに調整期間としても十分と言えそうだ。また、27500円付近では予想PERは13倍台前半にまで低下し、PBRは1.2倍を割り込む。バリュエーション的にもボトム感が意識されるため、ここからの下値余地は大きくはないだろう。
他方、急落しては反発という動きを繰り返しながら上値を切り下げてきただけに、上値で買ってしまった投資家も多く、しこりも意識される。日経平均がピークを打った2月半ば以降も信用買い残は積み上がってきただけに、需給も良くないだろう。戻り待ちの売り圧力は相当に残っていると考えられ、上昇するにも辛抱強くこれをこなしてからとなるため、水準の切り上がりには時間がかかるだろう。下値が堅い一方で上値も重い展開がしばらく続きそうだ。
個別では、週初はまず連休前に発表された日本電産<6594>の決算が消化されることになる。21日に発表された第1四半期決算は、売上高および営業利益ともに前年同期比で大幅な増収増益となり、四半期ベースでは揃って過去最高を更新した。市場予想も大幅に上回った。信用買い残が積み上がったままであることは気懸かりだが、2月半ば以降長らく株価はさえない動きが続いてきた分、見直し機運が高まるか、連休明けの動きが注目される。市場への影響力も大きい銘柄だけに、ポジティブな動きが先行し失速せずに買いが続けば、相場全体にもポジティブな動きが広がる可能性がある。
なお、今週は26日に6月全国百貨店売上高、独7月Ifo景況感指数、米6月新築住宅販売、27日に米連邦公開市場委員会(FOMC)(~28日)、米6月耐久財受注、米5月S&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数、米7月消費者信頼感指数、28日に日銀金融政策決定会合の「主な意見」(7月開催分)、パウエルFRB議長会見、29日に米4-6月期GDP速報値、30日に6月失業率・有効求人倍率、6月鉱工業生産、6月住宅着工統計、米6月個人所得・個人消費支出などが予定されている。
主な企業決算では、27日に信越化<4063>、28日にアドバンテスト<6857>、SCREEN<7735>、TDK<6762>、エムスリー<2413>、サイバーエージェント<4751>、29日にファナック<6954>、キーエンス<6861>、村田製作所<6981>、HOYA<7741>、富士電機<6504>、富士通<6702>、NRI<4307>、週末30日にはデンソー<6902>、ローム<6963>、ナブテスコ<6268>、コマツ<6301>、NEC<6701>、MonotaRO<3064>などが予定され
ている。