また、リートファンドの純資産残高は10兆円を超えており、ファンド全体の2割に達しようとしている。2011年から2012年にかけて爆発的に売れた「通貨選択型ファンド」のような状況に近くなっているといえよう。
こうした日本の個人投資家のリートへの偏重については、海外の金融市場関係者とのミーティングで話題となることも多く、関心が高まっている。
もともと、リートは複雑な仕組みの金融商品といえ、理解するためにはある程度の知識が必要とされる。しかも、海外リートとなれば馴染みが薄く、個人投資家に幅広く売れるファンドとしては違和感が強い。この点も通貨選択型ファンドと重なるところだ。
海外リートを投資対象とするファンドは、分配金が毎月支払われる毎月分配型がほとんど。個人投資家の分配金へのニーズが強いことが、販売が好調である最大の要因となっている。
しかし、中には、高水準の分配金を維持するために、運用によって得られた収益から支払われる「普通分配金」に加えて、投資元本を原資とする「特別分配金」を支払っているファンドも散見される。
特別分配金はつねに悪者というわけではない。例えば、何年も前から保有している投資家と、決算日の数日前に購入した投資家が、それぞれ受け取る分配金を同じにするためには必要な仕組みである。しかし、前述のように、分配金を維持するために支払うのであれば問題となってくる。
今後、さらに円高が進行する、あるいは、円高が定着するだけでも、分配金の減配や基準価額の下落は避けられない。純資産残高が大きいだけに、資金が短期間で急激に流出するような事態になれば、基準価額の急落や、投資先の海外リート市場にも悪影響が出る可能性がある。
保有しているファンドにリートが多いという人は、見直しを検討すべきだろう。
※マネーポスト2016年秋号