金の裏づけがある「SPDR(スパイダー)ゴールド・シェア」は、金現物を業者間取引で用いる400オンス(約12.5キロ)の大型バーの形でロンドンのカストディアン銀行の地下金庫に保管している。
実は最近、大手精錬所が集積するスイスに、ドバイから大量の金現物が送られている。世界の金現物取引の中心地はロンドンだが、ドバイは主に新興国向けの金現物中継基地としての役割を果たしている。そのドバイに集まった小口の金現物がスイスで業務用大型バーに鋳造され、ロンドンの地下金庫へ移動しているのだ。
ここで思い出すのが、1年間で米ドル建て金価格が28%値下がりし、NYダウが28%値上がりした2013年である。金を売って株を買う欧米の投資マネーが金市場から抜け、新興国マネーが旺盛な実需の買いを入れた年だ。
当時は「SPDRゴールド・シェア」からも投資マネーの流出が加速したが、売却されたバーは窓口での販売には向かない。
小口化するためにロンドンからスイスに大量の金現物が輸出され、そのスイスで500グラム、1キロと小口化された金現物が香港、インド、シンガポールなどへ大量に運ばれていった。まさに今、この2013年に起きた流れと真逆の流れがスイスを介して起こっているのである。
※マネーポスト2016年秋号