こうしたケースは、需要の変化によって本業の見直しを迫られている事例だ。しかし一方では、次のように需要が増大している企業もある。
「サーバーや配線周りを整備するインフラエンジニアとして務めている方は、オフィスの移転や縮小のケースが増えているため、以前にも増して忙しくなったそうです。そのため、会社から転職しないようにとボーナスが出ているとのこと。この流れは一旦落ち着いても仕事がなくなることはなく、おそらく年収が2倍に跳ね上がって転職するという話も聞いています」(錦戸さん)
コロナ禍によってもともとあった需要が拡大することもあれば、新しく生まれることもある。今後、平時からあった“ミスマッチ”を是正するように人材の流動性が高まることは容易に想像できるが、需要がどのように変化するか予測は困難だ。
「この1年半の間、相談内容の傾向が短期間で変わっていくという感じを受けています。マスク需要が予測できなかったように、この先、どの業種がどう変化するのかは不確定要素が大きいので予断を許しません。転職を検討する際には、できるだけ最新の情報を入手して進めてほしい」と錦戸さんはアドバイスする。
仕事に対して何を望むのか、転職の際に何を重視するのか。収入なのか、やりがいなのか。労働環境なのか、人間関係なのか。それとも将来性なのか。コロナ禍での転職にはそうしたベースをしっかり持ったうえで、現在の新しい環境に対応していくことがより重要になっているといえそうだ。
取材・文/岸川貴文(フリーライター)