転職の成功と失敗は、どこが分かれ目になるのか。錦戸さんが続ける。
「転職では得るものと失うものとが必ず出てきます。自分が希望するものが曖昧だと、転職後に失ったものの大きさに気づき、ショックを受ける可能性もあります。
仕事のやりがいを重視するのか、収入なのか、労働環境なのか。私の相談者で、『人事の仕事がしたいのだけれども、まだその経験が浅いので収入が減るのは仕方ない』といって転職した方もいました。やりたいことができるなら遠距離通勤や人間関係が多少きつくても我慢できるという人もいますし、『今は収入が第一』という人もいます。
2つの希望があって、どちらも捨てがたいこともあるでしょう。運よくすぐに両方が手に入ることもありますし、すごく時間がかかるケースもあります。時間に限りがある場合は、優先順位をつけたほうがよいですね。仕事に何を求めるかという優先順位がしっかり定まっていないと、『転職は失敗だった』となりやすいものです」
休業が続いた百貨店勤務の女性は…
とはいえ、すでに会社が傾いているとか、業種的に未来がなさそうだという理由で転職を考える人もいるだろう。いまいる会社がブラック企業の最たるもので、一刻も早くとにかく環境を変えなければ、という状況の人もいるはずだ。そんな人はキャリアカウンセラーのような人を相談相手として持っておくといいかもしれない。
「『なんとくモヤモヤしているんです』という感じで相談に来られて、「どんな場面でモヤモヤを感じますか?」と対話を重ねていく中で、自分のやりたいことや希望が見えてくるケースはたくさんあります。30代半ばの百貨店に勤めていた女性の方なのですが、お店の休業が続いていたときに相談に来られました。
『このまま待っていていいのか、転職したほうがいいのか』と相談されたのですが、仕事に何を望むのかは人それぞれで違うので、答えは本人が持っているんです。『あなたはどうしたいですか?』と聞いて言葉にしてもらい、一緒に考えていきました」