自動車の事故は当事者間で過失の有無を協議することが一般的だ。では、整備不良がある道路や、ガードレールが設置されていない道路で事故が発生した場合、その道路を管轄する自治体も責任を問われる可能性があるのだろうか。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。
【相談】
千葉県八街市での事故。下校中の小学生5人が飲酒運転の大型トラックに突っ込まれ死傷。悔しいのは保護者らが自治体にガードレールの設置などを嘆願していたのに、予算を盾に応じなかったこと。あの道の危険性を放置していた自治体の責任は重いと思います。竹下弁護士の見解をお聞かせください。
【回答】
道路の設置、または瑕疵により発生した事故では、道路の管理をしている自治体(市道であれば、市になります)が国家賠償法に基づき、賠償責任を負います。
道路の設置、または管理の瑕疵とは、道路が通常有すべき安全性を欠いていること。そして、道路の設置、または管理に瑕疵があったとみられるかどうかは、その事故当時における道路の構造、用法、場所的環境、利用状況等諸般の事情を総合考慮し、事案ごとに個別的、具体的に判断されます。
当該道路は、歩車道の区別がなく、ガードレールもありません。道幅、通行車両の種類・大きさ、交通量、歩行者の通行の状況によっては、通常有すべき安全性を備えていたか問題になり得ると思います。また、通学路として使われていたことは、管理者の責任を重くする事情です。かねて危険性の指摘がなされ、保護者からガードレール設置陳情があったことも、考慮されるべき諸事情になります。