もともと可能性は低いとされていたが、最新の8月雇用統計の数値が予想外に悪かったこともあり、今回のFOMCでの量的緩和策の縮小(テーパリング)決定の可能性は一段と遠のいた。市場では11月FOMCでのテーパリング決定、年内の開始が濃厚とされている。
一方、今回の9月FOMCの注目度が低いかといえばそうではない。今回はFRBメンバーによる政策金利見通し(ドットチャート)が公表される。前回6月FOMCでは、参加者18人のうち13人が2023年末までに少なくとも1回の利上げがあると予想し、3月時点の7人から倍近くに増えた。また、22年中に利上げがあると見込んだ参加者も7人と、3月時点の4人から増えた。今回、22年の利上げを想定するメンバーが7人からどれだけ増えるかが注目される。
サプライチェーン(供給網)の乱れや需要超過を背景に世界的なインフレ懸念が根強くくすぶる一方、新型コロナ変異株の拡大を受けて世界的な景気不透明感も強まっている。そうした中、22年内の利上げを支持するメンバーが想定以上に増えるとなると、利上げによる来年からの景気減速懸念が一層強まり、インフレと景気減速が併存するスタグフレーションへの警戒感が高まりかねない。単純に株式のバリュエーション面での許容度を落とすという観点からも相場にはネガティブとなる。米国でもデルタ株の脅威が続くなか、今回のFOMCが過度にタカ派寄りの結果となることは考えにくいが、ドットチャートの結果には注意したい。
FOMCの結果は、東京市場では祝日明けの週末24日に消化されることになる。そのため、週前半の相場はこう着感の強い展開となりそうだ。そうした中、先週から話題になっている中国恒大集団の債務問題やこれを受けたアジア市場の動きに左右されやすい展開となることにも留意したい。
そのほか、米国では住宅着工件数や新築住宅販売などの経済指標が予定されている。インフレ動向の中でも住宅価格の高騰がとりわけ目立っているため、これらの指標で、人々の住宅購買意欲が衰えていないかを確認したい。住宅指標は景気に対する先行性の高い指標でもあるため、大きく下振れると、景気減速懸念がさらに強まり、FOMC以外の要因で米株市場が軟化することも想定されるため、注目だ。
一方、17日に自民党総裁選の告示を迎えたことで、29日の投開票までは各候補の政策論争が活発化する。メディア露出も増えると思われ、次期政権への期待感が引き続き相場を下支えしそうだ。また、東京都の新型コロナウイルス新規感染者数が1000人を下回る日が増えるなど、感染ピークアウト感が鮮明になってきた。ワクチン接種を2回済ました人の割合も既に5割を超えたこともあり、国内景況感の改善も支援要因となろう。
加えて、政局流動化をきっかけに9月第1週から海外投資家による個別株買いや先物買いが活発化しているが、年前半に先物中心に売り越しを続けていた海外勢の買い余地はまだまだ大きい。さらに、9月の上昇局面において逆張りで大量に売り越していた個人投資家を中心に、買い遅れた投資家による押し目買いなども今後は想定される。
先行き需給面は良好といえそうだ。
なお、今週は21日に日銀金融政策決定会合、米FOMC(~22日)、米4-6月期経常収支、米8月住宅着工件数、米 8月建設許可件数、22日に黒田日銀総裁会見、パウエルFRB議長会見、米8月中古住宅販売件数、23日に英国金融政策発表、トルコ中銀金融政策決定会合、南ア準備銀行金融政策決定会合、24日に8月全国消費者物価指数、独9月Ifo景況感指数、米8月新築住宅販売件数などが予定されている。