コロナ禍での変化の1つに、SNSへの「映え投稿」が減ったという指摘がある。これまでは、旅行や飲食店などに出かけた際、写真映えする景色や食べ物をきれいに撮影してSNSに投稿する行為は老若男女を問わず、当たり前に行われてきた。しかし、コロナ禍で外出自粛が求められるようになると、他人の目を気にしてSNSへの投稿を「自粛」する人が増えたという。その1人である20代女性会社員に、フリーライターの吉田みく氏が話を聞いた。
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埼玉県在住のIT関連企業勤務、山田加奈さん(仮名・29歳)は、新型コロナウイルス感染拡大をきっかけにSNS映え投稿を卒業したことを話してくれた。
「コロナ前は、週1でオシャレカフェへ足を運びSNS映えする写真を撮影していました。時には気合いの入った洋服コーディネートも投稿したりと、写真映えを気にする日々を送っていたんです。しかしこのSNS中心の生活もコロナをきっかけにがらりと変わりました」(山田さん、以下同)
山田さんのアカウントは“鍵アカ”と呼ばれる非公開設定のもので、学生時代の友人や会社の同期など知り合いからのみ、フォローを許可しているそうだ。キラキラした投稿をするたびに、「素敵〜! おしゃれ〜!」と言われるのが快感だったと、山田さんは話していた。
「不要不急の外出自粛やステイホームなどが言われるようになってから、友人知人たちのSNS投稿がめっきり減りました。更新しているのは私くらいであることに、今年の春ごろ気づいたんです。SNSに投稿すると、外出して浮かれているように見えちゃいますもんね……」
コロナ禍でのSNS投稿は好ましく思われないことに気づいた山田さんは、更新をストップ。最後の投稿から半年以上経つという。この件をきっかけに、他にもいろいろと気付いたことがあったそうだ。
「SNSにどっぷりだった時は、オシャレなカフェで2000円程度の出費は当り前だと思っていましたが、冷静に考えると超高いですよね。しかも私は映える写真を撮るためだけに毎週のように足を運んでいたんです。交通費のことも考えると、かなりの費用を費やしていたことに気づきましたよ」
それまでは貯金額がほぼゼロだった山田さんが、脱・SNS映え投稿をきっかけに毎月2万円ほどの貯金ができるようになったそうだ。しかし、最初のうちは貯金できることに喜びを感じていたものの、徐々に虚しくなっていったという。