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かつての人気企業「JTB」 本社ビル売却、ボーナスゼロ、人員削減の苦境

 今年4月にJTBを退職した20代男性は「先行きの不安がどうしても拭えなかった」とこう明かす。

「いい会社だと思っていたし、愛着もありました。かなり悩みましたが、最後の一押しになったのは、やはり『給料』でした。年収500万円ほどでしたが、昨年11月に2021年度は社員の年収を3割カット(2019年度比)とするという発表がありました。

 実際に2021年の4月から給料のカットが決まり、“これは限界だ”と判断して、転職活動を始めた。ボーナスだけでなく、基本給が減る“ベースダウン”となると心理的な影響も大きかった」

 社外の人間にも衝撃的だったのは、3月末に行なわれた大幅な減資である。資本金を23億400万円から1億円にまで減らしたのだ。

「資本金が1億円以下なら、税制上は中小企業と見なされ、複数の税制上の優遇が受けられます。なかでもメリットが大きいと思われるのが、法人事業税のひとつで、人件費などを基準に算出される『外形標準課税』の免除です。

 資本金1億円超の大企業は、赤字であっても一定程度の税負担が求められますが、中小企業はその対象にならない。法人事業税の支払いを抑えることができ、手元資金の確保につながります」(前出・千葉氏)

 かくして「ガリバー」と呼ばれたJTBは中小企業に転落した。

 減資についてJTB広報室に問うと、「コロナで非常に傷んだ財務基盤を安定化させるのが目的」との回答だった。

 同社はいま、未曾有の危機に直面している。

※週刊ポスト2021年10月8日号

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