私は、テレビで離脱決定の瞬間にパブで狂喜して祝杯を上げる人たちを見て、1933年に満州国の成立を認めない国際連盟に脱退を告げて帰国した松岡洋右を喝采で迎えたという我が同胞も、きっとあのようにはしゃいだのであろうと思った。
一方、東アジアにおいては、常設仲裁裁判所の裁定を意に介さず、自らが定めた九段線(中国が南シナ海の領有権を示すために地図上に引いている破線)に固執する中国が、「満蒙は生命線」と叫んで譲らなかった大日本帝国を彷彿とさせる。
ユーラシア大陸の東端と西端で、核兵器を保有する軍事大国が既存の国際秩序に反発する姿勢を取った。そう考えれば、イギリスと中国がこのところ妙に仲がよかったことまでが気にかかるようになる。
そういう時に、頼みの綱のアメリカ軍の最高司令官が、強権的なロシア大統領を公然と称賛し、「同盟国には応分の負担を求める」というトランプ大統領であったとしたら、到底、心安らかではいられない。我が国の株式市場では、安全保障の観点から、エネルギーや食糧の自給がテーマになるのではなかろうか。
仮にヒラリー候補が勝っても、トランプ候補を支持した層をまったく無視するわけにはいくまい。単純労働しかできない彼らに雇用を創出するための最善の方法は、ドル安誘導である。我々はそのことを肝に銘じておくべきであろう。
※マネーポスト2016年秋号