私の老後は年金で安心。なんの心配もありません──そう言い切れる人がどれだけいるだろうか。ゆとりある生活が送れるのか、「年金崩壊」は起こらないか、不安は尽きない。そうした中、来年4月、改正年金制度法の施行によって、年金制度が大きく変わる。
「年金博士」こと、ブレイン社会保険労務士法人の北村庄吾さんが話す。
「法律の改正というのは、目的があって行われるので、その背景をしっかり理解することが重要です。今回の改正には、日本人の健康寿命が延びたことに合わせ“いままでよりも『長く』『しっかりと』働いてほしい”という政府の考えが反映されています。特に、長く働く意欲のある女性にとってはポジティブで有利な変化でしょう」
年金制度はそもそも複雑でわかりにくく、しかもしょっちゅう変わるのでややこしい。とはいえ、「難しそうだから」「面倒だから」と敬遠すれば損をするのはあなた自身。
「公的年金の受給額は、原則、労働人口や平均余命などの社会情勢によって変化します。いまのところ、額が減る要素はあっても増えることは考えにくい。制度を理解し、万全の対策をたてる必要があります」(北村さん・以下同)
改正の大きなポイントが、「厚生年金の適用範囲の拡大」だ。年金は大別すると、「国民年金」と「厚生年金」に分かれる。国民年金は自営業者などを含めすべての国民が加入する義務があるのに対し、厚生年金はサラリーマンや公務員などが加入する。国民年金を、いわゆる“1階部分”、厚生年金を“2階部分”と呼ぶのはそのためだ。
実際、国民年金だけをもらう人と、両方をもらう人の平均受給額には月額で約9万円もの開きがある。にもかかわらず、厚生年金に加入している女性は、男性に比べ1000万人以上少ないのが現状だ。
これは、そもそも厚生年金に加入しない専業主婦が多いことに加え、パートで働く女性でも勤め先の規模が小さかったり、労働時間や勤務期間が短いため、厚生年金の加入要件を満たさないケースが多いからだ。
今回、そこに大きなメスが入る。改正後の2022年10月からは従業員数が100人超の規模の企業に、2024年10月からは同50人超の企業に、厚生年金の加入義務が課せられる。
「これまでは、“大企業(500人超)でパート勤めする人”に限定されていたものが、規模の小さな会社でパートとして働いている人も、将来、厚生年金を受け取れるようになります」