来年4月より改正年金制度法が施行される。この新制度では、厚生年金の適用範囲が段階的に拡大される。改正後の2022年10月からは従業員数が100人超の規模の企業に、2024年10月からは同50人超の企業に、厚生年金の加入義務が課せられる。「年金博士」こと、ブレイン社会保険労務士法人の北村庄吾さんはこう話す。
「これまでは、“大企業(500人超)でパート勤めする人”に限定されていたものが、規模の小さな会社でパートとして働いている人も、将来、厚生年金を受け取れるようになります」
現状では、1週間あたりの労働時間が20時間以上、月収8.8万円以上、勤務期間の見込みが1年以上という条件があるが、このうち勤務期間についても「2か月超」に緩和される。
さらに、今回の改正では、「在職定時改定」が導入されている。65才以降も働く厚生年金の加入者は、「年金を受給しながら、年金保険料を払っている」状態だ。年金の受給額は納めた年金保険料と加入期間によって変動するが、65才以降も働く人の年金の加算が行われるのは「退職したとき」または「70才になったとき」のみ。つまり、せっかく働いて保険料を納めているのに、その効果はすぐには出ない。つまり、働き損をしていたのだ。
「しかし改正後は、毎年10月に、その年の8月までの保険料納付の実績が反映され年金額が増額されるようになる。働くことのメリットが、受け取る年金にダイレクトに反映されるようになりました」(北村さん・以下同)
働きながら年金を受け取る際のデメリットも緩和される。2000年の年金制度改正によって受給開始年齢が60才から65才に引き上げられたことで、1966年4月1日以前に生まれた女性(男性は1961年4月1日以前)は、60~65才で「特別支給の老齢厚生年金」を受け取っている。そのうち仕事をしている人は、年金と収入の合計が月額28万円を超えると、年金受給額が減額されたり、極端な場合停止されたりしている(在職老齢年金)。
「2019年末の時点で、この制度のせいで年金を減らされていた人は全受給権者の半分以上いました。これが働く意欲をそいでいたのですが、その基準が28万円から47万円にまで拡大されます。存分に働ける環境が整ったと言っていい」