日本経済は消費も企業活動もまさにV字回復の真っ只中にある。数字がそれを示している。緊急事態宣言が明けた10月、百貨店にそれまで外出自粛していた客が押し寄せた。
「売上、客数ともに10月は前年同月比109.5%と大きく伸長した。売上はコロナ前の2019年を上回っています」(三越伊勢丹)
高島屋、大丸・松坂屋、阪急・阪神など各社軒並み売上が伸びている。
「特選衣料雑貨などの高額品に動きが見られたことから前年実績を上回った」(高島屋広報・IR室)
飲食店での酒類提供解禁で消費が急増しているのがビール類。需要が旺盛な夏は過ぎたものの、10月はビール大手4社がそろって売上を伸ばした。
「業務用のビール類(樽・びん)は9月比で約2.4倍となりました」(サントリー広報部)
相澤幸悦・埼玉大学名誉教授(経済学、金融論)が指摘する。
「百貨店の売上や飲食店の売上は景気の『先行指標』という位置づけです。日用品の買い物は近所のスーパーで済むが、あえて百貨店に行くのは、ちょっと高級なものを買ってみよう、消費を楽しみたいという欲求が出てきたということ。景気回復の流れが出てくると、まず百貨店など小売り消費が動き、遅れて自動車販売が伸び、そして最も高額な住宅需要が高まる」
その自動車、住宅の需要も動き出した。10月の国内新車販売台数は過去最低の約28万台だったが、原因は半導体不足とコロナで海外の部品工場が生産停止しているため、車をつくれないからだ。需要はむしろ旺盛で、消費者は買いたくても買えないのが実情。そのため販売店には受注残が積み上がり、車種によっては半年待ちの状態。新車が品薄だから中古車が売れ、中古車業界のオークション価格は過去10年で最高値をつけている。
住宅も同様だ。不動産調査会社の東京カンテイによれば、首都圏の中古マンション平均価格は5か月連続の上昇だ。
「新築タワマンは高すぎて買えない。“ウッドショック”と呼ばれる木材の輸入価格上昇で新築戸建ての価格も高騰している。だから住宅を購入したい人が中古マンション市場に流れて相場を押し上げている。自動車や住宅まで回復していると見れば、現在の需要は先行的なものというより本格的な消費回復と考えられる。景気の戻りはかなり早いのではないか」(相澤氏)