ビジネス目的のあっせん業者は、あたかも割のいいアルバイトかのようにうたうが、卵子提供は本来、そう気軽にすべきことではない。
「卵子の採取には、腟の中から卵巣に針を刺し、卵子を吸い取る必要があります。1回の採取で複数個の卵子を採取するため、提供時はその月の月経が始まると、毎日筋肉注射を打って卵巣を刺激します。腕やお尻から注射することで、つくられる成熟卵子の数を増やすのです。
その後、超音波検査で2、3日おきに卵胞の大きさを測定し、成熟卵子が10個くらいあることが予測できてから静脈麻酔をかけ、腟から針を刺します」(中塚さん)
このとき、卵巣からの出血が止まらなくなったり、誤って針で腸を突いてしまったり、腟から菌が入って化膿したりと、さまざまな健康上のリスクがある。卵子の採取に限った話ではないが、その他の手術と同様に、麻酔が命にかかわることもごくまれにあるという。
日本で唯一、無償での卵子提供仲介を行う「OD-NET」理事長の岸本佐智子さんは、そもそも卵子提供に高額な報酬があることに疑問を唱える。
「卵子や精子はモノではありません。もし、卵子提供で生まれた子が大きくなって、自分と遺伝的関係のある女性がお金目当てに自分(卵子)を売ったと知ったら、大きなショックを受けるかもしれません。
もちろん、卵子の採取には身体的にも負担がかかるので、ある程度の補償はあった方が望ましい。ですが、ビジネス目的の業者に頼んで卵子を購入すると、500万~600万円はかかります。しかも、生まれてきた子が、自分が卵子提供で生まれたことや、そのドナーがどんな人なのかを知る権利も認められていません。
どんな出産でも、赤ちゃんが生まれさえすればゴールではありません。本当に大切なことはその先にある。提供する人も、提供を受ける人も、生まれてくる子の将来まで思いをめぐらせてほしい」
※女性セブン2021年12月2日号