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「金持ち優遇」の金融所得課税 岸田首相はなぜ切り込めないのか

最も税負担が重いのは年収700万円台

 こうした制度を踏まえて、合計所得階級別に税・社会保険料負担率がどう変化するかを推計してみたところ、その結果は驚くべきものだった。税・社会保険料負担率は、一般的な中高年サラリーマンの年収700万円台がピークの43.4%となっている。ところが、年収100億円の人は21.2%と、その半分にも満たないのだ。一般的なサラリーマンと比べて、年収100億円の人の方が税・社会保険料負担率が半分になるというわけだから、貧富の格差は広がるばかりだろう。

 こうした金融所得課税の不条理は、早急に解消されなければならない。今回、岸田首相は先送りしてしまったが、やるべきことは実は簡単だ。金融所得も他の所得と合算して、総合課税を適用すれば良いのだ。さらに、退職金や不動産譲渡益、相続などによる収入についても特例や分離課税を廃止して、原則全ての所得を合算して課税する総合課税に一本化すれば良い。それだけで、消費税を5%に戻せるくらいの税収は簡単に得られるはずだ。

 では、なぜこんなシンプルな税制改革が断行できないのか。その理由は、複雑な仕組みの下で、日本の富裕層たちがこっそりと税負担や社会保険料負担を逃れている現実があり、その利権を手放したくないからではないだろうか。例えば退職金には、退職所得控除を適用した残りの金額のうちのさらに半分が課税対象となる優遇措置がある。天下りを繰り返し、その度に巨額の退職金を得ている財務省をはじめとする官僚たちが、その優遇措置が無くなるのを恐れて、富裕層の利権を容認していることも大きな一因だろう。

 今回、金融所得課税強化を見送ったのは、市場関係者からの反発によるところも大きいだろうが、実際にはこうした利権関係者の存在が関係しているように思えてならない。

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