「特別な能力を持っていないといけないんじゃないかと勘違いする方が多いのですが、そうとばかりは限りません。自分の業界では当たり前であっても、別の業界にいくと人材が足りていないことはよくあります。いま持っているスキルが希少価値になることはありえます」(錦戸さん)
たとえば、わかりやすい例でいえば、IT業界にいたら普通に持ち合わせているスキル・ノウハウだとしても、他のIT化が遅れている業界に行けば、「ITにとても詳しい人」になる可能性があるということだ。
趣味でゲームをつくっていたり、プログラミングをやっていたりした人が転職後にそれを生かせるようになって給与アップしたというケースも実際にあるという。自分の持っているものがどこでどのように重宝されるかは、特定の業界に長くいるだけではわからない。
「“自分の希少価値”は情報がないと気づけません。そのために広くいろいろな人と付き合いをしておくことが大切です。同じ業界の人とばかり付き合っていると、“自分はどうせこのくらい”と思い込んでしまいます。いろいろな人と付き合って話していると、『それ、うちの業界に来たらエキスパートだよ』ということがあるのです」(錦戸さん)
ただ、仕事以外の人間関係を築くのは口で言うほど簡単ではないだろう。せいぜい学生時代の友人など頼りない糸を手繰っていくしかない人も多いかもしれない。その場合は、転職エージェントやキャリアカンセラーに相談してみるという選択肢もあるだろう。
自分の気づいていないスキル・能力を見出して、広い視野で転職活動に取り組めば、減った給与の回復は可能だし、給与アップもありえるのではないだろうか。
取材・文/岸川貴文(フリーライター)