「転石苔を生ぜず」──引っ越しや転職などで居場所を移ることを繰り返していると財産や地位が得られないことのたとえである。かつては仕事を頻繁に変える人は「職を転々とし……」と言われ印象が悪かったし、「こらえ性がない」と判断されもした。実際のところ、転職回数は再就職にどの程度、影響するのか。
NEWSポストセブン「転職研究室」が20代~60代の男女を対象に「コロナ禍における転職の検討状況」についてのアンケートを行い、転職(活動を含む)を経験した人551人から回答を得たところ、転職活動の際に転職回数を聞かれたことが「ある」と答えたのは221人、「ない」が292人だった。意外と転職回数を気にしない企業も多いようだ。
キャリアカウンセラーとして30年、転職希望者の相談を受けてきた錦戸かおりさんの実感によると、「いまだに法務や経理など、いわゆる固い職種の場合は、転職回数は少ない方がよいという価値観があるにはあるが、全体的にはそうした意識は驚くほど急速に変化してきている」という。
安定性を求める業種、たとえば金融業界にしても、かつては転職回数が少ないほうが望ましいとする文化が長らく続いていたが、近年盛んなフィンテック(金融[Finance]と技術[Technology]を結び付けた動き)によって、割と短いスパンで会社を移っていく人が多いIT業界と混ざり合ったため、そうとも言い切れなくなってきている。
また、企画部門、マーケティング部門だと転職回数に対する許容範囲は広いのだという。
「マーケティング部門だと、長く同じところにいると新しい風を取り込みたくなってくるので、転職回数の多さは気にしない傾向があります。時代の流れもあってやはり“動ける人”が求められているので、転職回数が多いことを極度に気にする必要はないと思います」(錦戸さん)
だからといっていたずらに短期での転職を繰り返してしまうと、転職先の会社になじんだり、その会社なりのスキルを上げていったりするチャンスが得られず、十分なキャリアが積めないこともありえる。それは当然、給与に跳ね返ってくる。