企業の採用担当者が気になるのは、転職回数よりも前の会社を辞める(た)理由なのかもしれない。錦戸さんも「どのような場面で、どのような判断をする人なのか。応募者の考え方や判断を知るために、退職理由を聞くのはとても有効なことです」と指摘する。
転職理由をまったく正確に伝える必要はないが、隠そうとすればわかりにくくなったり、話の辻褄が合わなくなったりしがち。また、隠そうとすればするほど面接官は聞きたくなるものだ。
「失敗したことは言える範囲で素直に伝えていいと思います。いまならどうするかということとセットで伝えておけば、『柔軟性があって学べる人』という印象を与えることができます」(錦戸さん)
転職理由がパワハラやセクハラなど言いにくい場合は、キャリアカウンセラーなど相談できる人をもっておくことも有効になる。気持ちを吐き出す過程で自分に起こった出来事の「事実の部分」と「感情の部分」を整理することができ、面接官にも冷静に話ができるはずだ。
短期での退職だからといって、企業と社員のどちらかに100%の責任があることはまれだろう。錦戸さんもこういう。
「半年とか短期間で転職すると、自分はダメな人間だと卑下する人がとても多いのですが、本人の問題ではない場合もあるはずです。
中小企業に勤めていたときは時間と予算をある程度、自由にやらせてもらっていたのに、大企業に入って時間的な拘束が厳格だったり、担当業界が限定されたりなどした結果、自分には合わなかったとわかって辞める場合もあります。
自分をどう生かしたいかという問題なので、短期間で辞めても過度に責任を感じることはないと思います」(錦戸さん)
冒頭のことわざには「積極的に活動の場を変えていく者は時代に取り残されることがない」という、ポジティブなもうひとつの意味もある。