米国の金融政策の変更も影響
金融はさまざまな市場が密接に関連し合って均衡を保つ複雑なシステムである。エルドアン大統領の奇策が成功する可能性は低い。また、大統領の政策目標には、どうしても経済成長にバイアスがかかってしまう。適切な金融政策を実行するにはやはり、中央銀行の独立性が不可欠だ。
この株価、為替の急落を受けてエルドアン大統領は20日夜、緊急の市場救済措置を発表した。リラ暴落で被った損失を補填(リラ建て預金に対する損失補填)したり、年金支給額の大幅引き上げなどでキャピタルフライトを防ぐ措置が打ち出され、トルコ・リラ対ドルレートは20日の段階で大きく戻し、その後もリバウンド基調となっている。27日現在、11月下旬以降の下げ幅をほぼ取り返す水準まで戻している。
また、イスタンブール100種株価指数は23日には下げ止まり、24日は4.8%、27日は0.3%それぞれ上昇している。
今回のトルコ金融市場の急変は、エルドアン大統領の無謀な金融政策が最大の要因だと考えられるが、米国の金融政策の変更も影響している。
米国では2022年、いよいよ利上げ局面に入る可能性が高まっている。それはグローバル経済に予想もつかないところで予想もつかない影響を与えかねない。グローバル金融市場で大きな問題が生じたとき、連邦準備制度理事会(FRB)は柔軟に対応できるだろうか。
米国のインフレはコロナ禍の景気対策を含め、リーマン・ショック以降長期にわたって続けられた金融(量的)緩和政策が要因である。だとしたら、過剰流動性を引き締めればインフレは止められそうだ。しかし、別の要因、例えば供給側のショックなど非金融要因が原因だとすれば、また別のインフレ対策が必要となるのではなかろうか。それはFRBの業務範囲を超えており、バイデン政権の政策能力にかかっている。
各方面で情勢は煮詰まってきた。2022年の金融市場は波乱含みだと予想している。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。